このページの要点
- 自社のネットショップでの販売は通信販売に当たり、広告に表示事項を載せる義務がある(特定商取引法11条)。
- 送料は金額で、引渡時期は期間又は期限で書く(施行規則24条1号・2号)。「別途」「順次発送」では足りない。
- 表記・利用規約・返金ポリシー・配送ページの期限と手数料を一致させる。廃止した決済手段を残さない。
- 請求開示にした欄は、請求の方法と遅滞なく提供する旨を書く(法11条ただし書、規則25条)。
物を売るネットショップの表記は「広告の一部」
自社のネットショップで商品を売ることは、特定商取引法の「通信販売」に当たります(特定商取引法2条2項)。通信販売の事業者は、広告に一定の事項を表示しなければなりません(同法11条)。ネットショップでは、商品ページと「特定商取引法に基づく表記」のページを合わせたものが広告になると考えて、どちらかに漏れなく載せる設計にします。
事務所がこれまで作成・レビューしてきたネットショップの表記では、法律が求める欄を並べるだけでなく、「その店の実際の運用と一字一句合っているか」を確かめる作業に最も時間をかけています。表記は、お客様から問合せや苦情が来たときに、事業者が「最初からこう書いていました」と示す資料になるからです。
物販ネットショップの表記で、事務所が設けている主な欄(例)
表示事項の詳しい内容は特定商取引法施行規則23条・24条に定められています。物販に特有の欄として、配送業者とお届け日時の指定、海外への配送、領収書、適格請求書発行事業者の登録番号、商品の注意事項などを独立させると、問合せが減ります。
表記と実際の運用がずれていた例
すでに表記を公開している店の書類を見直すと、ほぼ必ず見つかるのが、表記と実際の運用のずれです。事務所が手がけたプロ向け用品のネットショップでは、ヒヤリングの結果、次のようなずれが見つかりました。
事務所の改訂例|公開中の表記と実際の運用
支払方法
廃止した決済手段や手数料が残っていると、お客様はその方法で払えると考えます。表記は、決済の設定を変えるたびに直す書類です。
期限の日数
書類ごとに日数が違うと、お客様は自分に一番有利な書類を根拠に主張できます。どの書類を開いても同じ日数が書いてある状態にします。
お届け日の指定
受けていない指定について条件を書くと、条件を満たせば指定できると読まれます。
このときは、表記に載っていた責任者の氏名の漢字が登記と違っていたことも分かり、ヒヤリングシートで登記どおりの表記を確認して、表記とプライバシーポリシーの両方を直しました。小さなことに見えますが、表記は事業者を特定するための書類なので、名称・氏名は登記と一字違わずに書きます。
「準備中」「未取得」のまま公開しない
別の事例では、依頼者の原案の表記に、電話番号の欄が「現在取得準備中のため未記載」、許可番号の欄が「未取得(将来的に取得予定)」と書かれていました。電話番号は表示が求められる事項なので、「準備中」のまま公開すると表示の義務を満たしません。電話番号を表示しない方法をとるなら、後で述べる「請求があれば遅滞なく提供する」方式として、その旨と請求の方法を書く必要があります。許可番号の欄は、そもそも扱う商品に許可が必要かどうかを確かめてから、要るなら取得後に載せます(中古品・古物の販売と買取)。
住所・電話番号を出したくないときの考え方
自宅で開業する人や、海外の会社から「住所や電話番号を表記に載せずに済ませたい」という相談をよく受けます。特定商取引法では、請求があれば遅滞なく書面又は電子メール等で提供する旨を表示し、実際にそうできる体制を整えていれば、一部の事項の表示を省略できます(同法11条ただし書、施行規則25条)。ただ、事務所が依頼者に説明しているのは、省略の効果が思ったより小さいことです。
依頼者からの質問と事務所の回答|住所も請求があれば開示する形にできますか
Q電話番号だけでなく、住所も「請求があれば開示」にできないでしょうか。
A特定商取引法の表示としては可能です。ただし、①個人情報保護法は、保有個人データについて事業者の名称・住所などを本人が知り得る状態に置くことを別に求めているので、プライバシーポリシーには住所が残ります(個人情報保護法32条1項1号)。②前払いで代金を受け取り、すぐに発送しない場合にお客様へ送る通知には、名称・住所・電話番号を書く必要があり、表記のような省略の仕組みは見当たりません(特定商取引法13条1項、施行規則37条2号)。結局、実際に注文したお客様には住所と電話番号が伝わり、効果は「注文していない閲覧者に見せない」ことに限られます。そのうえで、名称と住所は表示し、電話番号だけを請求開示にする形をお勧めしました。
この依頼者は、説明を承知のうえで住所も請求開示の形を選んだため、所在地の欄を請求開示の書き方に差し替えました。どちらを選ぶかは事業者の判断ですが、「省略すれば住所を誰にも知られない」と誤解したまま決めないことが大切です。注文確認メールの書き方は注文確認メールと契約の成立で解説しています。
プラットフォームの仕様が先に決まることもある
BASEで販売する事業者から「代表者の氏名も請求開示にできるか」と聞かれ、法令上は代表者の氏名も請求開示にできますが、BASEの設定では個人の氏名を非表示にできず、所在地と電話番号だけを非公開にできる仕様です。依頼者は仕様に合わせる方法を選びました。法律で省略できるかどうかより先に、使っているサービスの表示の仕様が効いてくる例です。開業前に、使うサービスの表記の設定画面でどの欄を非公開にできるかを確かめておきます(Shopify・BASEで開店するとき)。
くじ形式・ポイントを使う販売では欄を増やす
オンラインのくじ形式でトレーディングカードを販売するサービスの表記を作成したときは、物販の表示事項に加えて、申込みが成立する時点(決済と抽選の処理が完了した時点)、サイト内ポイントの有効期限・換金できないこと・失効する場合、抽選の方式、当選した商品の状態の差(初期傷など)、利用者が出品する場合の許可の扱い、を独立した欄にしました。デジタル上の抽選・ポイントと、実物のカードの配送が混ざるため、引渡しの時期も「ポイントは即時」「配送する商品は依頼から○日以内が目安」と書き分けています。売り方が普通の物販と違うなら、その違いの数だけ欄が増えると考えます。
表記を公開する前の確認
- 決済・送料・発送までの日数を、ショップの設定画面の実際の値と1つずつ照合した
- 表記・利用規約・返金ポリシー・配送ページの期限と手数料が一致している
- 販売業者名・代表者名が登記と一字違わない
- 請求開示にした欄には、請求の方法と遅滞なく提供する旨を書いた
- 許可が必要な商品なら、許可番号を正しく載せた
表記に書き切らない事項は「商品ページ・注文画面」に委ねる
販売数量の上限や予約商品の発送時期は、商品やキャンペーンごとに変わります。プロ向けネイル用品の自社ECでは、表記の販売数量の欄を「商品の性質・在庫状況等により制限する場合があり、制限があるときは各商品ページ又は注文手続画面に表示します」とし、予約商品の引渡時期も「各商品ページの表示による」としました。
この書き方は、利用規約の側に「商品ページ・注文画面に表示した販売条件は、その取引について規約に優先する」という項を置くこととセットです。表記と規約に個別の数量や日付を書き込まずに済む構成になります。一方、海外の会社の日本向け食品ECでは、1回の注文の上限数量がヒヤリングの回答で確定していたため、表記に数値で書きました。上限が決まっているなら数値で、変わるなら表示する場所への委任で、と使い分けています(優先の順番の決め方は返品特約と返金ポリシー)。
支払方法の欄:カード明細の名義と、振込の照合
海外の会社の日本向け食品ECのヒヤリングでは、「お客様のカード明細に表示される予定の加盟店名」を聞きました。提案書では、表記の名称とカード明細の名義が照合できないと、チャージバック(カード会社への不正利用の申立て)の原因になるとして、名称を表示する方針を勧めています。決済代行会社はまだ選定中だったため、支払方法の欄は確定事項のように書かず、記入の枠を残しました。銀行振込を受ける店では、振込口座とあわせて、注文番号の書き方を表記に載せています。
事務所が書き方を工夫した表記の欄(例)
振込の欄の一文は、入金期限内に振込が実行されたかを店が確かめる運用の前提になります。「その他」の欄は、プロ仕様の製品を含む店で、使用上の注意への入口として使いました。
窓口のアドレスと、ヒヤリングの設問の作り方
同じプロ向けネイル用品の店では、返品専用のメールアドレスと一般の問い合わせ用のアドレスが、表記・プライバシーポリシー・返金ポリシーの中で混在していました。事務所は、書類と欄ごとにどちらのアドレスを載せるかを一覧にして確定しました。返品特約の欄と返金ポリシーの窓口は返品専用のアドレス、表記のメールアドレスの欄とプライバシーポリシーの窓口は一般のアドレス、という割り振りです。
このショップのヒヤリングシートでは、公開中のサイトから読み取った商号・所在地・電話番号・受付時間・メールアドレスを設問にあらかじめ書き込み、「現行どおり」で答えられる形にしました。表示中の情報を前提に質問したことで、旧表記に残っていた食い違いが回答の段階で見つかっています。
海外の会社の日本向け食品ECでは、事業者情報の部の10問を、表記の欄に1対1で対応させました。問い合わせ用のメールアドレスの設問には「電話番号を請求開示にするなら、ここが事実上の一次窓口になる」と注記しています。電話番号を表示しないなら、表記のメールアドレスの欄の重みが増すということです(海外の会社が日本向けに売るとき)。
くじ形式の販売の「表現に関する注意書き」の欄
オンラインのくじ形式でトレーディングカードを販売するサービスの表記には、「表現に関する注意書き」という独立した欄を置いた例があります。本サービスは商品の販売であり賭博・投機ではないこと、当選確率・当選内容・市場価値・将来価値・収益性は保証しないこと、相場は変動すること、演出は抽選結果に影響しないこと、通信環境によって表示が遅れることがあること、を並べています。あわせて、商品画像にイメージを含む場合があることと、カードに個体差があることも書かれています。注文確認メールとの関係など、注文の流れは注文確認メールと契約の成立で解説しています。
よくあるご質問
ネットショップの特商法表記には、最低限なにを書けばよいですか?
販売価格、商品代金以外の費用(送料は金額で)、支払の方法と時期、引渡時期、申込みの期間、返品特約、販売業者の名称・住所・電話番号、法人なら代表者又は責任者、契約不適合の扱いなどです(特定商取引法11条、施行規則23条・24条)。物販では配送と返品の欄を特に具体的に書きます。
自宅の住所や電話番号を表記に載せずに済ませる方法はありますか?
請求があれば遅滞なく提供する旨を表示し、実際に提供できる体制を整えれば、表示を省略できる事項があります。ただし、プライバシーポリシーや、前払いで代金を受け取ったときの通知には住所・電話番号が必要になるので、実際に注文したお客様には伝わることを前提にしてください。
BASEやSTORESでは、法律で省略できる項目も非表示にできますか?
サービスの仕様によります。法令上は省略できても、設定画面で非表示にできない項目があります。開業前に、表記の設定画面でどの欄を非公開にできるかを確認しておきます。
送料無料キャンペーンや離島の送料は、表記にどう書けばよいですか?
送料は金額で表示します。全国一律の額と、沖縄・離島など別料金の地域の額を書き、送料無料の条件はサイト上の表示による旨を書いておくと、キャンペーンのたびに表記を書き換えずに済みます。
表記と利用規約の内容が食い違っていたら、どうなりますか?
お客様は自分に有利な方を根拠に主張できますし、返品特約なら表示が不十分とされるおそれがあります。表記・利用規約・返金ポリシー・配送ページの期限や手数料は、同じ内容にそろえてください。
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本ページは一般的な情報提供です。許可・届出・免許の運用は、所管の行政機関によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたネットショップの利用規約・特定商取引法に基づく表記・返金ポリシー、酒類の免許の申請、化粧品・中古品・OEM・販路の契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 消費者庁 / 国税庁 お酒に関する情報