限定販売・抽選販売の規約|購入数量の制限・転売禁止・当選後のキャンセルの書き方

人気商品の限定販売や抽選販売では、買い占めと転売への備えを、表示・申込みの流れ・規約の3か所でそろえて書いておくと、断る場面でも説明がつきます。この記事では、数量制限、転売禁止、抽選の設計、当選後のキャンセルを条文例つきで整理します。

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このページの要点

  • 「限定」「先着」の表示は、総数・受付期間・1人あたりの上限を明瞭に書く(景品表示法5条3号の告示、特定商取引法12条)。
  • 購入数量の制限は、数える単位と同一人物の判断材料を決め、照合に使う情報の利用目的も示す。
  • 抽選販売は「応募」「当選」「購入」を分け、当選を購入できる権利として扱い、購入期限と失効を決める。
  • 転売禁止は購入者との約束にとどまり、転売先には及ばない。違約金より、取消しや停止などの措置を軸に書く。

限定販売の対策は「入口・当選・事後」の3か所に分けて書く

人気の商品を数を限って売るとき、店が困る場面は大きく4つあります。転売を目的とした大量の注文、複数のアカウントを使った重複した応募、当選したのに購入手続をしない人、そして「残りわずか」という表示と実際の数のずれです。どれも「転売を禁止します」の一文では対応できません。入口(誰の注文や応募を受けるか)、当選(購入できる権利をどう渡すか)、事後(売った後の転売やキャンセルにどう対応するか)の3か所に分け、商品ページの表示・注文の画面・規約の条文を同じ内容でそろえて書くと、断る場面でも説明がつきます。

誰に売るかは、売主が決められます。契約をするかどうかは当事者が自由に決められるからです(民法521条1項)。ただ、規約に「理由の如何を問わず、注文を承諾しないことがあります」とだけ書いても、基準が読めません。定型約款(不特定多数を相手にする取引で、あらかじめ準備した条項のまとまり)のうち、相手方の利益を一方的に害する条項は、合意をしなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。断る事由は、具体的に書いておきます。

3か所の整理(一般的な例)

  • 入口:注文や応募を受ける前購入数量の上限、重複や転売目的の注文を承諾しない事由、届け先や決済名義の確認を決める。承諾する前なら契約は成立していないので、断るだけで済む
  • 当選:抽選で購入者を選ぶとき応募期間、当選の決め方、購入期限、辞退と繰上げを決める。当選は「購入できる権利」として扱い、売買の成立とは分ける設計が書きやすい
  • 事後:売った後転売の禁止と、違反が分かったときの措置(未発送分の取消し、アカウントの停止、以後の販売の見合わせ)を決める。返品やキャンセルの線引きもここで書く

契約がいつ成立するかの定め方は、注文確認メールと契約の成立で整理しています。

転売そのものは、購入者の物になった品物の処分です。チケットのように専用の法律がある品目を除くと、止められるかどうかは、売主と購入者が転売を禁止する約束をしたかで決まる場面が中心です。その約束は購入者との間でしか効かないので、入口で断る仕組みを先に整えます。

対象は、通常の価格で買える権利を数量限定で売る、または抽選で配る販売です。応募に代金を払う「くじ型」や景品付きの販売は、別の規制が絡むため含めません。

「限定」「先着」の表示と、購入数量の制限をどう書くか

限定販売の表示は、総数・期間・1人あたりの上限の3つを、購入を決める画面で読める形にします。購入数量の制限は、何を1単位として数えるかを先に決め、判定に使う情報の利用目的も示します。

限定の表示は、数と条件を明瞭に

供給量が著しく限定されているのに、その限定の内容が明瞭でない表示や、供給期間・供給の相手方・顧客1人あたりの供給量が限定されているのにそれが明瞭でない表示は、景品表示法5条3号に基づく告示「おとり広告に関する表示」(平成5年公正取引委員会告示第17号)の対象になります。「数量限定」「なくなり次第終了」とだけ書くのでは足りず、総数・受付の期間・1人あたりの上限を、同じ画面に書きます。

通信販売では、実際と著しく違う表示や、実際より著しく有利だと誤認させる表示は、誇大広告として禁止されています(特定商取引法12条)。数量や期間の限定も、買うかどうかを決める条件ですから、実際と違えば問題になります。販売条件の欄は特定商取引法に基づく表記ともそろえます。

書き方の例(一般的な例) |限定の表示

限定数の書き方

よくある書き方「数量限定」「なくなり次第終了」とだけ書き、総数も1人あたりの上限も書かない。
整えた書き方「限定200点、お1人2点まで。受付は○月○日○時から○日○時まで(200点に達した時点で終了)」と、総数・上限・期間を同じ画面に書く。

供給量や1人あたりの供給量の限定が明瞭でない表示が、告示で問題にされています。

残数の表示

よくある書き方「残りわずか」を、実際の在庫と関係なく常に表示する。
整えた書き方残数の表示は実在庫と連動させる。連動できないなら表示しない。再販の予定があるなら、その有無を書く。

「最後の入荷」と書いて追加で販売した、という行き違いは、誇大広告の問題に近づきます。

限定数を決めた根拠(仕入れ数・製造数)と、追加販売をするかどうかは、販売の前に社内で記録しておくと、後で表示の根拠を説明できます。複数の販売先で同じ在庫を売るときの扱いは、配送と在庫の規約で整理しています。

購入数量の制限は「単位」を決める

購入数量の制限の3つの単位(一般的な整理)
単位書き方の例長所注意する点
1回の注文あたり1回のご注文につき2点まで画面での制御が簡単注文を分ければ回避される。単独では転売の対策にならない
お1人あたり(期間を通じて)受付期間を通じて、お1人2点まで転売の防止という目的に最も近い同じ人かどうかの判定基準と、確かめる手段が要る
1か所のお届け先あたり同一のお届け先への発送は、期間を通じて2点まで家族名義や別アカウントをまとめて止めやすい同居の家族が別々に買う場合も断るので、例外の申出を用意する

お1人あたりの上限を採るなら、同じ人かどうかを何で判断するかを規約に書きます。材料は、氏名、お届け先、電話番号、メールアドレス、カードの名義、注文の時刻や回数などです。1つが一致しただけで同一人物とみなさず、複数の情報の一致や近似などから、実質的に同一のお客様による注文と合理的に判断した場合に絞る書き方にします。判断をするのは「当社」と明記します。

この照合は個人情報の利用です。利用目的はできる限り特定し(個人情報保護法17条1項)、取得したときは、公表している場合を除き、速やかに本人へ通知し又は公表します(同法21条1項)。プライバシーポリシーに「購入数量の制限の運用および不正な注文の防止のため」といった目的を入れます。不正な購入が疑われる人の情報を他の店と共有するなら、原則として本人の同意が必要な第三者提供にあたります(同法27条1項。例外あり)。

上限を超えた注文の扱い:計算例

上限2点・単価4,800円(税込)で、同じお客様が4回に分けて注文した場合の例
注文の順数量金額(税込)扱い
1回目1点4,800円承諾する(累計1点)
2回目1点4,800円承諾する(累計2点で上限)
3回目2点9,600円承諾しない。受領済みなら全額返金
4回目1点4,800円承諾しない。受領済みなら全額返金

5点・合計24,000円の注文のうち、承諾するのは2点・9,600円、承諾しないのは3点・14,400円です。承諾しない部分は全額を返金し、決済の費用までお客様から差し引くことはしません。

条文例|購入数量の制限

  1. 当社は、商品ごとに、1回の注文、お客様1名又は1か所のお届け先あたりの購入数量の上限を定めることがあります。上限は、各商品のページ及び注文手続の画面に表示します。
  2. お客様が、複数の注文又は複数のアカウントに分けて上限を超える数量を注文したときは、当社は、先に受け付けた注文から上限の範囲内の数量について承諾し、上限を超える部分については承諾しないことがあります。
  3. 前項の判断にあたり、当社は、氏名、お届け先、電話番号、メールアドレス、決済に用いる名義その他の登録情報の一致又は近似、並びに注文の時期及び態様を考慮し、同一のお客様による注文であると合理的に判断することがあります。判断に用いる情報の利用目的は、プライバシーポリシーに定めます。
  4. 当社は、注文の一部又は全部を承諾しないときは、その旨を速やかにお知らせし、当該部分について受領済みの代金があるときは、これを返金します。
  5. 同居の家族など、お届け先が同一であっても別のお客様として購入を希望する場合は、注文の前に当社に申し出てください。当社は、事情を確認のうえ、承諾することがあります。

実際にどの情報を照合できる体制かを確かめてから、第3項の判断材料を書きます。承諾しない扱いは、契約の成立時期を定めた条とそろえます。

抽選販売は「応募」「当選」「購入」を分けて設計する

抽選販売の規約は、応募した時点で買う約束をしてもらう設計と、当選した人に購入できる権利を渡す設計の2つに分かれます。一般の消費者向けでは、当選を購入できる権利として扱い、購入手続が終わった時に売買を成立させる設計のほうが、辞退や不入金に対応しやすく、規約も短く済みます。

抽選販売の2つの設計(一般的な整理)
項目設計A:応募を申込みとする設計B:当選を購入できる権利とする
契約の成立店の当選の通知が届いた時(民法522条1項・97条1項の考え方)当選した人が購入期限内に購入手続を完了し、店が承諾した時
代金の支払応募時にカードの与信枠を確保し、当選後に決済することが多い当選後の購入手続の中で決済する
当選後に購入されないとき成立した売買の不履行として、催告のうえ解除する(民法541条)購入期限の経過で権利が失効し、次の順位の人に回せる
お客様に請求する金額解除に伴う違約金を定めるなら、消費者契約法9条1項1号の対象になる費用や違約金は生じない設計にできる

設計Bは、民法の「売買の一方の予約」の考え方に近い構造です。売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力が生じます(民法556条1項)。どちらの設計でも、画面と規約で「当選の時点で何が決まり、何がまだ決まっていないのか」を、誤解のない言葉で示します。

設計Bの流れ(一般的な例)

  1. 応募の受付応募期間、1人1回の上限、必要な登録情報を表示する。応募の時点では代金を受け取らない
  2. 応募の整理重複した応募や、自動化された手段による応募を除外する。基準は規約に書く
  3. 抽選無作為か、優先枠があるかを応募画面に表示する。結果と記録は店が保存する
  4. 当選・落選の通知通知の方法と時期、届かなかったときの扱いを決める
  5. 購入手続購入期限、税込の総額、送料、支払方法を表示し、期限内に完了した時に売買が成立する
  6. 失効と繰上げ期限を過ぎたら当選を失効させ、必要なら次の順位の人に権利を回す

抽選販売の画面と規約に入れる項目

  • 応募期間と、当選の数(販売する数量)、応募は1人1回か
  • 抽選の方法(無作為か、優先枠があるか)。優先枠なら対象と理由
  • 当選・落選の通知の方法と時期、購入期限と失効、繰上げ当選の有無
  • 辞退の方法と、辞退に費用がかからないこと(設計Bの場合)
  • 重複・不正な応募の無効、当選の取消しと返金、当選の権利の譲渡の禁止
  • 応募情報の利用目的(抽選・通知・不正応募の確認のため)

見落としやすいのは、優先枠と表示のずれです。過去の購入者を優先して当選させながら、画面に「すべての応募者に同じ確率で当選の機会があります」と書いてあると、表示と実際が合いません。優先枠を設けるなら、応募の画面に表示します。抽選の方法と結果は店が記録として残し、規約には、結果は店の記録によること、店が恣意的に結果を操作しないことを書いておきます。

18歳未満の人が法定代理人の同意なくした購入は、原則として取り消せます(民法5条1項・2項)。年齢の確認と、取消しがあったときの返金の手順も整えます。

条文例|抽選販売

  1. 抽選販売は、商品のページに定める応募期間内に、お客様が所定の方法で応募することにより参加できます。応募は、お客様1名につき1回とします。
  2. 当選は、応募期間の終了後に、応募した方の中から無作為の方法で決定します。ただし、優先枠を設けるときは、その旨及び対象を商品のページに表示します。
  3. 当選は、当選された方が購入手続を行う権利を得ることを意味し、当選の時点で売買契約が成立するものではありません。売買契約は、当選された方が当社の定める購入期限内に購入手続を完了し、当社が承諾した時に成立します。
  4. 購入期限までに購入手続が完了しないときは、当選は失効します。この場合、お客様に費用及び違約金は生じません。当社は、失効した数量について、次の順位の方に当選をお知らせすることがあります。
  5. 当選された方は、当選の権利を第三者に譲渡し、又は貸与することはできません。
  6. 複数のアカウントによる応募、自動化された手段による応募その他不正な方法による応募が判明したときは、当社は、応募を無効とし、又は当選を取り消すことができます。取り消した場合に受領済みの代金があるときは、これを返金します。
  7. 抽選の方法及び結果は、当社の記録によるものとし、当社は、恣意的に結果を操作しません。

第3項は、契約の成立時期を定める条とまったく同じ内容にします。応募の時点で代金を受け取る運用なら、当選しなかったときの返金の時期を別に書きます。

転売目的の不正な注文とカード決済のトラブルについては、チャージバック・不正注文・後払いの未払いと決済代行契約の記事で詳しく説明しています。

転売禁止の条項は、どこまで書け、どこから効かないか

転売への対応は、注文を受ける前に断る根拠、購入した後の約束、違反が分かったときの措置の3つに分けて書きます。購入した後の約束は、約束をした購入者との間でしか効きません。転売先の人は契約の当事者ではないので、その人に転売禁止を直接及ぼすことはできません。

転売への備えの3段階(一般的な整理)
段階書く内容効き目の限界
入口(承諾する前)転売を目的とした注文と認められるときは承諾しない、と承諾しない事由に入れる目的は内心のことなので、判断の材料(一度の大量の注文、複数の届け先など)を店が確かめられる体制が要る
購入後(約束)営利を目的として第三者に販売しないことを約束してもらう約束した購入者にしか効かない。転売した事実を確認する手段も別に要る
違反が分かったとき(措置)未発送の注文の取消し、アカウントの停止、以後の不承諾、損害の賠償を書く規約に書いた範囲でしか取れない。金額の定めは、過大だと争いになる

「転売」を定義し、使い終えた品物の手放しを分ける

「転売を禁止します」とだけ書くと、購入した品物を使った後に不要になって手放す一般のお客様まで、禁止の対象に読めます。営利を目的として購入した商品を第三者に有償で譲渡することを転売と定義し、自分で使った後に手放すことは含めない、と書きます。

営利を目的としているかどうかの判断材料は、規約の本文ではなく、社内の運用基準として持ちます。一度に購入した数量、お届け先の数、受付の直後に同じ商品が出品されている事実、購入価格を上回る価格での出品などです。疑いだけで断定せず、お客様に事情の説明を求めてから判断するほうが、誤った扱いを防げます。

違約金をどう考えるか

「転売が判明した場合は販売価格の○倍を支払う」と定める例があります。お客様が消費者の場合、契約を続けたまま違反に科すこの種の金銭は、解除に伴う違約金を対象とする消費者契約法9条1項1号ではなく、損害賠償額の予定(民法420条。違約金は賠償額の予定と推定されます)、公序良俗(民法90条)、消費者の利益を一方的に害する条項の無効(消費者契約法10条)の観点から検討されます。実際の損害とかけ離れた額は、争われやすくなります。

転売の事実は、店が証拠を集めて立証する必要があります。金額より、未発送の注文の取消しやアカウントの停止など、店が自分で実行できる措置を軸にするほうが現実的です。

事業者どうしの取引では、立証が難しいことから違約金を定める例が多く見られます。たとえば、違反した販売額の数倍の額と一定額のうち高いほうを違約金とし、さらに「超える損害は別に請求できる」と続ける書き方です。これでは、定めた額が賠償額の予定なのか、実損害の賠償とは別の制裁なのかが読み取れません。どちらの趣旨かを決めて書きます。卸先との契約全体は卸と正規取扱店の契約書で解説しています。

卸先・取扱店の転売を縛るときの独占禁止法

事業者に対する販売条件としての転売禁止は、公正取引委員会の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」に照らします。指針は、流通業者の販売価格を拘束することを、原則として不公正な取引方法として違法とし(第1部 第1)、安売りを理由に特定の小売業者への販売を禁止することも、原則として違法としています(第1部 第2の4)。

一方、一定の基準を満たした流通業者だけに商品を取り扱わせ、認めた流通業者以外への転売を禁止する選択的流通は、基準が品質の保持や適切な使用の確保など消費者の利益の観点から合理的で、他の希望者にも同等に適用されるなら、通常は問題にならないと整理されています(第1部 第2の5)。「転売を止めたい」を「安く売る業者には売らせない」にすり替えず、基準を示して同じ基準で扱うことが基本です。

出品者が複数いるマーケットプレイスでは、出品者が転売を禁止した商品について、購入者の転売目的の購入を禁じる規約の例があります。禁止の有無を商品ページに表示して、購入者の規約と結び付けます。転売する側が古物商の許可を要するかは、品物の出どころで分かれます(古物商許可は必要か)。

条文例|転売の禁止

  1. 本条において「転売」とは、営利を目的として、購入した商品を第三者に有償で譲渡することをいいます。お客様が購入した商品を自ら使用した後に不要となって手放すことは、転売に含みません。
  2. お客様は、転売を目的として商品を購入し、又は購入した商品を転売してはなりません。
  3. 当社は、購入の数量、注文の時期、お届け先、過去の購入の履歴その他の事情から、転売を目的とした注文であると合理的に判断したときは、その注文を承諾しないことがあります。
  4. お客様が第2項に違反した事実を当社が確認したときは、当社は、未発送の注文の取消し、アカウントの利用停止、以後の注文の不承諾の措置をとることができます。取り消した注文について受領済みの代金があるときは、これを返金します。
  5. お客様が第2項に違反したことにより当社に損害が生じたときは、お客様は、その損害を賠償するものとします。

違約金の額は定めていません。金額を定める場合は、店に生じた損害の賠償に絞ります。第3項の判断の前に、お客様に事情の説明を求める手順を運用として用意します。

限定品の価格の見せ方やセールの打ち出し方については、二重価格・セール表示とポイント還元の書き方の記事で詳しく説明しています。

当選後・限定品のキャンセルと返金の線引き

「抽選結果の確定後は、キャンセル・返品・返金はできません」という一文は、場面の違う事態をまとめてしまいます。購入手続の前の辞退、購入が成立した後のお客様都合のキャンセル、支払の不履行、店の事情による中止、不正による取消しは、扱いが違うので、場面ごとに分けて書きます。

通信販売には、訪問販売のような法定のクーリング・オフはありません。お客様都合の返品を受けない特約は、広告と申込みの最終確認の画面に見やすく表示します。表示がなければ、商品を受け取った日から8日を経過するまで、お客様は返品できます(特定商取引法15条の3第1項)。書き方は返品特約と返金ポリシーで整理しています。

場面ごとの扱い(一般的な整理)

  • 当選後、購入手続の前に辞退する費用をかけずに認める設計が書きやすい。購入期限が過ぎれば、権利は失効する
  • 購入が成立した後に、お客様の都合でキャンセルしたい返品特約を広告と最終確認の画面に表示する。法令に基づく権利は否定できない
  • 設計Aで、当選後に支払われない期間を定めて催告し、解除する。請求する額は、実費に絞る
  • 店の事情で中止する・不具合で抽選や購入が成立しなかった抽選を無効にし、受領済みの代金を返金する。再度の抽選を行うかも書く
  • 不正な応募・注文だった規約に基づき当選や注文を取り消し、受領済みの代金を返金する

商品に不具合があったときの責任は、「返品不可」と書いてもなくなりません。免責の書き方は契約不適合の責任と免責条項で整理しています。

キャンセル料や差引額の考え方と計算例

設計Aのように当選後のキャンセルが契約の解除にあたる場合、解除に伴って定める損害賠償の額の予定や違約金は、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効です(消費者契約法9条1項1号)。限定品だからといって、代金の全額を一律に差し引けるわけではありません。キャンセルされた分を繰上げ当選などで次のお客様に同じ価格で売れるなら、店に生じる損害は小さくなります。受注生産品のキャンセルの精算は、受注生産・オーダーメイド商品のネット販売で整理しています。

当選後のキャンセル:差引額の考え方の例(価格12,000円、決済手数料が代金の4%かかると仮定)
場面考え方計算の例
次の順位の人に同じ価格で売れた売り逃しの損害は生じない。実際にかかった費用の範囲に絞る12,000円×4%=480円が上限の目安。かからなかった費用は差し引かない
売れ残りが出た生じた損害を、根拠をもって説明できる範囲で定める根拠のない一律の割合は避け、算定の根拠を説明できるようにする
購入期限を過ぎて失効した(設計B)購入手続の前なので、費用は生じない設計にできる差引額は0円

消費者から説明を求められたとき、事業者は、違約金などの算定の根拠の概要を説明するよう努めなければなりません(消費者契約法9条2項)。表の480円は仮の条件での計算です。実際の手数料や費用で確かめます。

返金の方法と、免責の書き方

返金は、代金を払った決済手段と同じ方法で行うのが分かりやすく、時期の目安も書きます。同じ方法で返せない場合の代替の方法と手数料の負担も決めます。

「システムの障害等による損害について、当社は一切責任を負いません」と書く例があります。消費者契約では、事業者の債務不履行による損害を賠償する責任の全部を免除する条項は無効です(消費者契約法8条1項1号)。抽選や購入手続が正常に行われなかったときは、抽選の無効、再度の抽選、受領済みの代金の返金という具体的な手当てを書くほうが、条項として安定します。責任の上限を定めるなら、事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除くことを、上限を定めるその一文の中に書きます(同法8条3項)。

よくある失敗と直し方

限定販売や抽選販売の規約では、次のような書き方が実務で多く見られます。何が問題で、どう直せるかを並べます。

書き方の例(一般的な例) |限定販売・抽選販売の規約

承諾しない権利

よくある書き方「理由の如何を問わず、注文を承諾せず、又はキャンセルすることができる」と書く一方で、契約は「決済が完了した時」に成立すると定めている。
整えた書き方契約の成立を「当社が発送のお知らせを送った時」に置き、承諾しない事由(転売目的、上限超過、複数アカウント、決済の不完了、在庫不足)を列挙して、最後は「前各号に準ずる事由」にとどめる。

決済で契約が成立すると、その後に断ることは成立した契約の取消しになり、条文どうしが食い違います。基準の見えない包括的な定めは、争われやすくなります(民法548条の2第2項)。

転売の禁止

よくある書き方禁止事項に「転売・営利目的で購入する行為」と1行だけ入れ、違反すると事前の通知なく利用を止められる、とだけ書く。
整えた書き方転売を定義して使用後の手放しは含めない。承諾しない事由、禁止、違反時の措置(未発送の取消しと返金、アカウントの停止、以後の不承諾)を分けて書く。

措置の範囲と返金の扱いがないと、取消しの場面で行き違いが生じます。定義がないと、一般のお客様まで対象に読めます。

抽選後のキャンセル

よくある書き方「抽選結果の確定後は、キャンセル、変更、返品、返金は一切できない」と書く。
整えた書き方当選は購入できる権利と位置づけ、購入手続の前の辞退は費用なしで認める。成立した後の返品は、返品特約の表示に従うと書く。

辞退もできないと読める書き方は、辞退した人への請求の根拠を巡る争いを招きます。辞退を認めたほうが、繰上げ当選にも進めます。

免責

よくある書き方「システムの障害等により生じた損害について、当社は一切の責任を負わない」と書く。
整えた書き方抽選又は購入手続が正常に行われなかったときは、抽選を無効とし、受領済みの代金を返金する、という手当てを書く。上限を定めるなら、故意又は重大な過失の場合を除く旨を、その一文の中に入れる。

責任の全部を免除する条項は、消費者契約では無効です(消費者契約法8条1項1号)。具体的な手当てのほうが、実際に役立ちます。

転売の違約金

よくある書き方「転売が判明したときは、購入代金の○倍の違約金を支払う」と定める。
整えた書き方未発送の注文の取消し、アカウントの利用停止、以後の不承諾を軸に、店に生じた損害の賠償を別に書く。

契約を続けたまま科す違約金は、民法420条・90条、消費者契約法10条の観点から争われます。実際の損害とかけ離れた額は、説明がつきにくくなります。

ヒヤリングで確認すること

規約を書く前に、運用の実態を確かめます。確認の理由と、響く書類を整理すると、次のようになります。

限定販売・抽選販売のヒヤリング事項
確認すること確認する理由響く書類
限定の数の根拠と、追加販売・再販の予定「最後の入荷」などの表示が実際と合うかを確かめるため商品のページ、特商法表記
購入数量の上限の単位と、同居の家族への対応断る基準と例外の運用を決めるため規約、注文の画面
同じ人かどうかの判定に実際に使える情報と、照合の体制書いても運用できない基準は、断るときの説明にならないため。利用目的の追加の要否も決まる規約、プライバシーポリシー
抽選の設計(応募を申込みとするか、当選後に購入手続とするか)契約の成立時期と、当選後に購入されなかったときの扱いが変わるため規約、応募・購入の画面
購入期限の長さと、繰上げ当選の有無在庫を確保しておく期間と、辞退の扱いが決まるため規約、当選の通知文
決済の手段、応募時のカード与信の有無、手数料の負担キャンセルのときに請求できる額の根拠になるため規約、返金ポリシー
転売の疑いがあるときに確認できる手段と、とる措置の段階措置を規約に書けるのは、実際に実行できる範囲だけだから規約、社内の運用基準
お届け先の変更や、当選者以外への発送を認めるか転売の手口になり得るため。認めるなら条件を決める規約、注文の画面

限定販売・抽選販売で起きがちなこと

共通するのは、断る基準と手順が、購入を決める前に見える場所に書かれていないことです。疑いだけで決めつけず、事情を確認する手順を運用に入れておきます。

よくあるご質問

転売目的の注文だと分かったとき、断れますか?

契約が成立する前であれば、承諾しない事由に「転売を目的とした注文と認められるとき」を入れておくことで、断る根拠になります。成立の後は、規約に書いた措置(未発送の注文の取消しと返金など)の範囲で対応します。疑いだけで決めつけず、事情を確認する手順を運用に入れておきます。

購入数量を「お1人2点まで」と決めたら、規約のほかに何が必要ですか?

商品のページと注文手続の画面に同じ上限を表示し、同じ人かどうかの判断材料と断り方を規約に書きます。照合に使う登録情報の利用目的は、プライバシーポリシーにも書いておきます。

抽選で当選した人が購入しなかったとき、費用を請求できますか?

当選を購入できる権利とし、購入期限を過ぎたら失効させる設計なら、費用は生じません。応募を申込みとして当選で売買が成立する設計では、不履行として解除することになり、定める金額には消費者契約法9条1項1号の上限があります。

転売禁止に違約金を定めておくことはできますか?

定めること自体はできますが、お客様が消費者の場合、実際の損害とかけ離れた額は、民法420条・90条や消費者契約法10条の観点から争われます。未発送の注文の取消し、アカウントの停止、以後の不承諾といった措置を軸にするほうが現実的です。

限定品は返品できないと書けば足りますか?

お客様都合の返品を受けない特約は、広告と申込みの最終確認の画面に見やすく表示する必要があります(特定商取引法15条の3)。表示しても、商品の不具合に対する法令上の権利までなくすことはできません。

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