化粧品のネット販売と、卸・正規取扱店の契約

化粧品のネット販売では、商品説明の表現と、卸先との契約で価格と販路をどう決めるかが中心になります。

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卸先に「希望小売価格を尊重」と書くと、再販売価格の拘束と評価される余地があります。禁止するのは値付けではなく、ブランドを毀損する売り方です。

このページの要点

  • 化粧品と、爪や皮膚に直接使わない資材・雑貨で、使用上の注意と責任を書き分ける。
  • 化粧品の虚偽・誇大な広告は「何人も」禁止(薬機法66条)。販売店の商品説明も対象。
  • 希望小売価格は推奨・目安にとどめ、ネット販売の禁止の範囲は定義で具体的にする。
  • 模倣品の疑いが出たら、販売停止・在庫の隔離・ECサイトからの削除の手続を踏む。

化粧品と、雑貨・資材を書き分ける

ネイル用品や美容用品のネットショップでは、肌や爪に直接使う化粧品と、そうでない資材・器具・雑貨が一緒に売られていることがよくあります。事務所が作ったプロ向けネイル用品のネットショップでは、ヒヤリングで「取扱商品のうち、薬機法上の化粧品(爪や皮膚に直接使用するもの)はありますか」と確認し、その回答を使って、使用上の注意と責任の条を書き分けました。

利用規約 第◯条(商品の性質及び使用上の注意)

  1. 当社の商品には、専門的な知識と技術を前提としたプロ仕様の製品が含まれます。
  2. お客様は、商品に表示された使用方法、使用上の注意及び保管方法を守るものとします。化粧品として販売する商品以外の商品(爪や皮膚に直接使用しない資材・器具・雑貨)は、用途以外に使用しないでください。
  3. 使用中に異常を感じたときは、直ちに使用を中止し、必要に応じて医師の診察を受けてください。
  4. 商品の写真や色味は、閲覧する環境により実物と異なることがあります。見え方の違いのみを理由とする返品は、返金ポリシーの定めによります。
  5. 使用方法に反する使用、目的外の使用又は施術の過誤により生じた損害の責任は、当社の責任の条の定めによります。

このショップの旧表記には、一般のお客様への販売を断ることがある旨の一文がありましたが、規約にその根拠がありませんでした。そこで、購入できる人の資格と、資格を欠く注文を承諾しない権利を条文にし、契約の成立時期の設計とつなげました(注文確認メールと契約の成立)。

化粧品の広告は「何人も」が対象

化粧品は、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚や毛髪を健やかに保つために使う物で、人体に対する作用が緩和なものをいいます(薬機法2条3項)。薬機法66条は、「何人も」化粧品などの名称・製造方法・効能・効果・性能について、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならないと定めています。ネットショップの商品説明も、販売店が書くものでも対象です。製造販売業者ではない小売店や、紹介するインフルエンサーも含まれることを前提に、商品説明の表現を確認します。

正規取扱店・卸の契約で、価格の拘束と見られないために

化粧品のブランドから、卸先(正規取扱店)との契約のレビューを依頼された事例があります。依頼者のご心配は、転売と、希望小売価格を大きく下回る値引き販売でした。事務所の指摘は4つでした。

  1. 価格:「希望小売価格を尊重」「ブランド価値を毀損する価格設定を行わない」は、書き方によっては実質的な再販売価格の拘束と評価される余地があります。価格は「推奨・目安」にとどめ、禁止する対象を値付けではなく、ブランドを毀損する販売の態様(極端な廉売の表示、セットのばら売り・小分け、景品表示法・薬機法に違反する広告、許可のない転売、真贋の分からない販路、ECモールへの出品など)に寄せます。
  2. 変わり得る取引条件:仕入価格・数量・送料・決済の方法が変わる可能性があるなら、本文に固定せず別紙に置き、改定の手続(事前の通知、既に受けた注文は旧条件、異議と解約の権利)を本文に置きます。
  3. 解除の効果:解除後の未払いの精算、商標や素材の使用の停止、SNSの投稿の修正・削除、在庫の処理を定めます。
  4. ネット販売の禁止の範囲:「その他一切」で広く禁止すると、卸先の自社のネットショップやSNSでの販売まで含むことになります。例外の許可の手続と、従業員や関係者による出品も違反とみなす条項を置きます。

事務所の改訂例|正規取扱店契約

価格の条

改訂前「希望小売価格を尊重」「ブランド価値を毀損する価格設定を行わない」。(依頼者原案)
改訂後前文に「本契約は、甲による再販売価格の拘束を意図するものではなく、乙は法令の範囲内において自己の責任と裁量により再販売価格を決定する。ただし、乙はブランド価値を著しく毀損する態様での販売を行ってはならない」と書き、希望小売価格は「ブランド維持の観点からの推奨価格であり、乙の再販売価格を拘束するものではない」と本文と別紙の両方に明記しました。禁止するのは、社会通念上著しく低い価格での販売、過度な値引きの表示、二重価格の表示などブランドを毀損する態様としました。

メーカーが卸先の販売価格を守らせることは、独占禁止法上の不公正な取引方法として問題になり得ます。値段そのものではなく、売り方の態様を禁止の対象にします。

取引条件

改訂前発注・納品・支払の条件を本文に固定。(依頼者原案)
改訂後対象商品・卸価格・最低発注数量・発注単位・希望小売価格を別紙に置き、改定は原材料費・物流費・為替・法令改正など合理的な理由がある場合に限って一定期間前に通知し、適用の開始日以降に成立する注文にのみ適用する、卸先は異議を申し出られ、話合いがまとまらなければ契約を終了できる、としました。

決済ができなかったときやチャージバックのときは、卸先が直ちに別の方法で支払うことも定めました。

改訂では、「オンライン販売媒体」(ECモール・フリマアプリ・オークションなど不特定多数に売れる一切の電子商取引の場)、「転売」(再販売・再卸・名義貸し・代理出品など、関係会社や役職員・委託先を通じたものも含む)、「ブランド毀損行為」の定義を新しく置き、契約終了後は一定期間内にウェブサイト・SNS・ECページから関連の投稿を削除する義務も定めました。違約金を置く場合は、額が過大だと公序良俗に反するおそれがあるため、合理性のある設計が必要です。ネット販売を全面的に禁止することの是非も、ブランドの販売の方針として合理的かどうかで事案ごとに検討します。

模倣品の疑いが出たときの手続

化粧品の相互の仕入・販売の基本契約では、依頼者の原案が、仕入側に薬機法・景品表示法などへの適合を保証させ、違反のときは仕入側が回収・表示の修正・行政への報告とすべての損害を負担する、模倣品と判明したら無催告で解除できる、という内容でした。改訂では、疑いが出た段階の手続を新しく置きました。

模倣品・コピー品の疑いが出たときの手続(改訂後の契約から)

  1. 通知疑いを知った当事者が相手方に通知する
  2. 初期対応の方針通知から一定の営業日以内に、初期対応の方針を示す
  3. 一時停止と隔離販売・出荷を一時停止し、倉庫の在庫を隔離して識別の表示をする。ECサイトその他の広告媒体から商品を削除する
  4. 調査調査に協力する
  5. 恒久的な対応在庫の処分、消費者への対応、行政への対応。未販売の在庫(倉庫・流通中・販売店・ECサイト上を含む)の返品・廃棄と、費用の負担・廃棄の証明

あわせて、第三者からのクレームの対応(原因をつくった当事者が主導し、相手方は協力、実費は原因側の負担、原因がどちらにもない場合は協議)、訴訟になった場合の防御の協力も加えました。ネットショップでは、模倣品の疑いが出たときに商品ページを残したままにすると被害が広がるので、「ECサイトからの削除」を手続の中に書いておくことが大切です。

他社が造った化粧品を売る:許認可の種類を特定する

事務所の改訂例|販売委託契約の保証

製造元の許認可

改訂前製造元が「日本国内における製造販売に係る必要な許認可を取得していることを甲が保証する」(製造元の所在地は空欄)。(依頼者原案)
改訂後製造元の所在地を記入し、「同社又はその委託先が、化粧品製造販売業許可、化粧品製造業許可、又は食品衛生法に基づく営業許可等、当該商品の製造・販売に必要な許認可を適法に取得していること」を委託元が保証する、と許認可の種類を特定しました。

「必要な許認可」とだけ書くと、何を保証したのかが争いになります。化粧品を販売のために製造・輸入する事業者には製造販売業の許可が必要で、製造の工程には製造業の許可が必要です。

この販売委託の契約では、お客様に表示する返品特約(開封後の使用感や香りなど消費者の一方的な都合による返品は受けない)と、委託元・委託先の間の不良品の負担(委託先の取扱いの過失による不良は委託先の負担)を別の条にしました(返品特約と返金ポリシー)。販売委託先は専属ではなく、委託元は他の委託先も自由に選べることも書いています(販路と運営の外注)。

「販売委託」という名前の仕入販売

他社が造ったスキンケアなどを販売委託で売る契約は、名前は「販売委託」でも、実質は仕入れて売る構成でした。委託元は販売手数料を取らず、委託先は再販売の差益で収益を得ます。修正版では、次の点を条文にしています。

  • 商品:植物オイル系のスキンケア、洗顔石けん、粉末の食品素材を成分と用途で特定し、仕様・成分・内容量・容器は別紙の仕様書による。委託先は変更できない
  • 販売地域:国内に限り、事前の承諾なく国外で販売・陳列・広告・輸送しない。違反は重大な違反として即時解除・損害賠償の対象
  • 価格:希望小売価格に対する掛率で卸価格を決め、発注数量に応じて2段階。掛率の変更は一定期間前までに通知し、異議があれば協議
  • 引渡しと在庫:指定倉庫向けに、運送会社への引渡しで完了し、所有権と危険が移る。検品の通知は納品日を含め一定の営業日以内。在庫は委託先の費用と責任で保管し、盗難を防ぐ
  • 終了時に残った在庫:委託先が自己の責任で処分・廃棄・再販売できるが、商標・ブランドの信用を損なう低価格の販売や不適切な方法は禁止。必要なら事前の承諾を得る。委託元が買戻しを望めば協議

売上の報告と帳簿の閲覧の条は販路と運営の外注で紹介しています。

正規取扱店に求める品質管理と、権利・情報の扱い

化粧品ブランドの正規取扱店の契約の改訂版では、価格や転売の条のほかに、次の条を置きました。

正規取扱店契約で置いた主な条(改訂版)
条内容
品質管理直射日光・高温多湿を避けた保管、ロット番号・有効期限の管理、先入先出。消費者からの苦情・健康被害・品質不良の申告は一定の営業日以内に報告して資料を提出し、証拠と対象商品を保存、回収・販売停止に協力。保管の不備・表示違反・法令違反による損害は取扱店の負担
広告広告・表示・販促・SNSの投稿で、効能効果の断定的な表示、虚偽・誇大な表示、消費者に誤認を与える行為をしない
知的財産商標・ロゴ・パッケージ・商品写真・広告素材は本部に帰属し、契約期間中に限り販売・施術の目的で非独占・譲渡不能の使用を許諾。商標や類似の標章の出願・ドメインの取得の禁止。取扱店が作った広告物・写真・動画は、本部が無償・期間の定めなく非独占で使える
個人情報顧客・予約・問い合わせ・施術の履歴を目的の範囲内でのみ利用。漏えい又はそのおそれを知った時から一定の時間内に報告。終了時の削除・返還(バックアップを含む)、事前の承諾のない再委託の禁止
監督役職員・業務委託先の違反は取扱店自身の違反と同じ責任。違反の疑いがあるときの資料の提出・調査への協力
違約金違反した販売の額を推定して算定できる。損害賠償額の予定だが、超える損害は別に請求できる。違反した商品1種類ごと・販売媒体ごとに発生し、調査・証拠保全・削除申請の費用も請求できる
責任の上限通常の損害に限り、過去一定期間の取引総額を上限とする。ただし故意・重大な過失と、転売・オンライン販売の禁止の違反、知的財産権の侵害、秘密保持・反社会的勢力の条項・個人情報の保護の義務の違反には上限を適用しない。請求権は損害と加害者を知った時から一定期間で消滅

依頼者の原案で解除の事由の一つに埋もれていた反社会的勢力の条項は、表明保証・将来の不関与・調査への協力・解除・損害賠償を備えた独立の条にしました。例外・期間・目的外利用の禁止・返還消去の定めがなかった秘密保持の条は、口頭で開示した情報の扱い、4つの類型の例外、専門家への開示、終了時の返還・消去とその証明、終了後一定期間の存続を備えた条にしています。

取引条件の改定は「更新のとき」と「期中」の二本立て

仕入価格・数量・送料・決済方法が変わる可能性があるという依頼者の質問への回答を受けて、改訂版では改定の手続を2つに分けました。1つは、契約の更新の時に別紙の条件とガイドラインを改定する手続で、一定期間前に通知し、更新日以降の取引に適用し、異議があれば協議して、整わなければ更新日に契約が終了します。もう1つは、期中に卸価格・発注条件・希望小売価格を改定する手続で、合理的な理由がある場合に限り、一定期間前の通知と異議の期間を置き、協議が整わなければ取扱店が終了できます。期中の改定を限定的にし、それ以外の見直しは更新の時にまとめる構成です。決済の方法は、ブランドが指定し、合理的な理由があれば変更でき、事前の通知の後に適用する、としました。

互いに売主にも買主にもなる基本契約

化粧品の相互の仕入・販売の基本契約は、依頼者の原案の段階から、両当事者が互いに売主にも買主にもなる双方向型の構成でした。個別の取引は発注書などを相手方が承諾したときに成立し、製造年月日などの特別な条件は発注書に明示する、納入から一定の営業日以内に検品して通知し、通知がなければ外観上の不備は承諾したものとみなす、と定めています。契約不適合は納品日又は発見日の遅い方から一定期間内に通知し、受け取った側の選択で交換・修補・不足分の納品・一部の返還・解除(重大な場合)を求められます。不適合の特定は、ロット番号・製造年月日・製品コード・外装の記号などの識別情報で行い、所有権は検収の完了の時に移ります。独占的な仕入・販売は別の独占契約によるとし、基本契約では独占を約束しない構成も、原案どおり維持しました。返品・不良の扱いは返品特約と返金ポリシーで紹介しています。

よくあるご質問

化粧品をネットで売るときに、許可は必要ですか?

自社ブランドとして化粧品を市場に出す(製造・輸入して販売する)なら製造販売業の許可、製造の工程を行うなら製造業の許可が必要です。許可を持つ事業者が出した化粧品を仕入れて小売するだけなら、販売の許可は通常要りません。

化粧品の商品説明で使ってはいけない表現は?

化粧品の効能の範囲を超える表現や、虚偽・誇大な表現は禁止されています(薬機法66条)。販売店の商品説明も対象です。医薬品のような治療・改善の効果をうたう表現は避けます。

卸先に希望小売価格を守らせることはできますか?

販売価格を守らせることは、独占禁止法上の再販売価格の拘束として問題になり得ます。希望小売価格は推奨・目安にとどめ、禁止する対象は値付けではなく、ブランドを毀損する販売の態様にします。

卸先のネット転売やモール出品を禁止できますか?

「オンライン販売媒体」や「転売」を定義し、禁止の範囲を具体的にします。「その他一切」と広く書くと、卸先の自社ECやSNS販売まで禁止することになるので、例外の許可の手続も置きます。

仕入れた化粧品に模倣品の疑いが出たら、どう対応しますか?

相手方への通知、販売・出荷の一時停止、在庫の隔離、ECサイトからの削除、調査への協力、在庫の処分と費用の負担、という手続を契約に書いておくと、疑いの段階から迷わず動けます。

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