お酒のネット販売:通信販売酒類小売業免許

お酒を2つ以上の都道府県の消費者にネットで売るには、通信販売酒類小売業免許が基本です。ネットだけでも販売場が要ります。

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通信販売の免許では、店頭で注文を受けることも、店頭でお酒を渡すこともできません。

このページの要点

  • 酒類の販売業免許は通信販売でも販売場ごとに受ける(酒税法9条1項)。作業場所と保管場所が分かる図面を付ける。
  • 通信販売で売れるお酒かどうかを、製造者の証明書や製造委託契約書で示す。
  • 販売画面・申込画面・納品書に20歳未満の飲酒禁止などの表示をする。
  • OEMの契約に、品目・ネット販売用の発送・免許への協力を書く。

お酒をネットで売るには「通信販売酒類小売業免許」

お酒をインターネットやカタログで、2つ以上の都道府県の消費者に向けて売るには、通信販売酒類小売業免許を受けるのが基本です。事務所では、自社ブランドのお酒をOEMで造って通信販売するための免許の申請を代理しました。このページでは、その申請の準備で依頼者から実際に受けた質問と、クラフトビールの製造委託契約の改訂を素材に、お酒のネット販売で押さえることを整理します。

ネットだけでも「販売場」が要る

依頼者からの質問と事務所の回答|販売場と図面

Qネットだけで販売する場合でも、販売場の所在地や平面図は必要ですか?

A必要です。酒類の販売業の免許は、通信販売の場合も販売場ごとに受けるものです(酒税法9条1項)。申請書類の一覧でも、販売場の敷地の状況と建物等の配置図は申請書の一部とされ、配置図には倉庫の部分やお酒の受注の業務を行う場所を明示することになっています。受注・梱包・出荷の作業場所と保管の場所(倉庫部分)を明示した配置図であればよく、お店の売場のような図面は要りません。図面は事務所で作成します。

Q土地の登記名義が自社と違う場合、ほかに書類が要りますか?

A販売場の土地又は建物が自己の所有でないときは、賃貸借契約書の写し又はこれに代わる書類が必要です(酒税法施行規則7条の3第2項2号)。無償で使うなら使用貸借の契約書の案を作成します。2つの会社の代表者が同じ人の場合は、両社でそれぞれ承認の決議をして議事録を残すことをお勧めしました。

申請書の記載事項と添付書類は、酒税法施行規則7条の3に定められています。販売場の図面、事業の概要、収支の見込み、所要資金、販売の管理の体制、役員の履歴書・定款・登記事項証明書、地方税の納税証明書、貸借対照表・損益計算書などです。

通信販売の免許では、店頭で売れない

依頼者は当初、本社の建物の入口付近でもお酒を販売したいとお考えでした。しかし、通信販売酒類小売業免許では、店頭で注文を受けることも、店頭でお酒を渡すこともできません。また、申請する販売場が酒場や料理店などと同じ場所でないことも求められるため、建物の中でお客様にお酒を提供している場所があるかどうかも、確認の事項に加えました。店頭でも売りたいなら、別の種類の免許を検討することになります。

通信販売で売れるお酒かどうか

通信販売酒類小売業免許で売れるお酒には範囲があり、国産のお酒なら、製造者の課税移出数量が一定の量に満たないことなどの条件があります。申請では、製造者が発行する証明書、又は製造を委託する場合の製造委託契約書などで、通信販売できるお酒であることを示します。この事例では、製造者から品目ごとの課税移出数量が基準に満たない旨の証明書が発行されたので、証明書による方法で申請し、製造計画書は要らないと整理しました。製造者から「製造計画書は見積書で代わりにできる」と言われたというご相談には、見積書は製造の数量の確認資料として扱い、締結後の製造委託契約書の写しを別にいただくようお願いしました。

販売画面・申込画面・納品書に出す表示

お酒のネットショップには、特定商取引法の表示に加えて、お酒に特有の表示が必要です。事務所の案内では、表と図で次のように整理しました。

お酒のネットショップに必要な表示(事務所の案内から)

販売画面「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています」の表示。酒類販売管理者の標識の内容(販売場の名称と所在地、管理者の氏名、研修の受講年月日、次回の受講期限、研修の実施団体)
申込画面年齢を記載する欄と、その近くに「20歳未満の者に対しては酒類を販売しません」の表示
納品書など(メールでの通知を含む)20歳未満の者の飲酒が法律で禁止されている旨の表示
文字の大きさ統一のとれた日本文字で、一定の大きさ以上(インターネットでは価格の表示の文字以上)
特定商取引法の表示価格・送料、支払、引渡時期、返品、名称・住所・電話番号、代表者又は責任者など(特商法表記)

酒類販売管理者の選任、研修、標識は、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律86条の9に定めがあります。

酒類販売管理者と研修

酒類販売管理者には、販売の業務に従事していて、過去3年以内に研修を受けた人などを選びます。研修は免許の前でも受けられ、早めの受講が求められます。選任は販売を始める時までに行い、選任・解任から2週間以内に届け出ます(酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律86条の9)。

審査の期間と、経営の基礎の要件

標準的な処理の期間は、申請書を提出した日の翌日から原則として2か月以内とされ、補正や追加資料の期間は含まれません。提出する前は期間が始まっていないので、準備の段階から逆算して計画を立てます。免許の要件(酒税法10条)のうち、経営の基礎の要件は財務諸表で確認されるので、決算期が来れば追加の提出があります。税務署長は、販売するお酒の範囲や販売の方法に条件を付けることができます(酒税法11条1項)。

免許の申請の準備の流れ(事務所の進め方)

  1. 事業の形の確認通信販売だけか、店頭でも売るか。扱うお酒の種類と製造者
  2. 販売場の確認受注・梱包・出荷・保管の場所。土地と建物の権利関係
  3. 通信販売できるお酒の確認製造者の証明書、又は製造委託契約書など
  4. 書類の収集と作成登記事項証明書・定款・決算書・納税証明書の原本の写し。図面・事業の概要・収支の見込みは事務所が作成
  5. 研修の受講酒類販売管理者になる人の研修を早めに受ける
  6. 申請と審査標準の処理期間は提出の翌日から2か月以内。追加の資料に対応する

OEMのお酒を自社ブランドで通販するとき

クラフトビールの製造委託の契約では、依頼者の原案と比べて、通信販売を前提とした改訂を重ねました。

事務所の改訂例|クラフトビールの製造委託

品目

改訂前「クラフトビール」。(依頼者原案)
改訂後「クラフトビール(酒税法上の品目として発泡酒に該当する商品を含む)」と、酒税法上の品目を明示しました。

売る側の免許や表示は品目に結び付くので、造る商品の品目を契約で特定しておきます。

充填と納品

改訂前樽詰めのみ。特定の自社の飲食店への納品が前提。(依頼者原案)
改訂後瓶詰めを追加し、充填の予定日の一定期間前まで樽・瓶の別と数量を変更できるようにし、瓶・王冠・ラベル・梱包材の費用負担を定めました。瓶の商品は納品先を固定せず、将来の自社の冷蔵倉庫への出荷や、ネット販売のための個別の発送の代行(条件は協議、費用は発注者負担)も加えました。

飲食店に卸すだけの契約のままでは、通信販売を始めるときに契約を作り直すことになります。

免許への協力

改訂前定めなし。(依頼者原案)
改訂後ネット販売のための販売業免許の取得・維持は発注者の責任と費用で行うこと、発注者が製造者の冷蔵庫などをお酒の保管場所として使いたい場合は可否・条件・費用を協議し、協議が整えば製造者は手続に合理的な範囲で協力すること(免許・登録が認められることは保証しない)を定めました。

製造者の製造免許や事業に重大な支障があれば、協力の内容の変更や中止を求められることも書いています。

このほか、製造者の許認可の維持と、取消しや停止のおそれが生じたときの通知の義務、製造物責任保険への加入と証明書類の提示、人身事故・重大な食品事故・法令違反を損害賠償の上限の例外とすること、共同で開発したレシピを使った同じ商品を第三者に製造・販売しないこと(製造者の既存の商品・一般的な製法・独自のレシピは除く)も加えました(OEM・製造委託)。

回答シートは「伺っている内容」を先に埋めて渡す

自社ブランドのお酒の通信販売の免許の申請では、依頼者に回答シートを渡しました。すでに伺っている内容を事務所が先に埋め、空欄だけを番号と答えでメッセージアプリに返信してもらう形式です。問いは20を超え、次のように分けました。

回答シートの区分と主な問い
区分主な問い
会社・役員役員全員(監査役を含む)の氏名・役職、住所と生年月日、職歴(勤務先・業種・担当事務)
商品正式名称、容量ごとの販売予定価格(税込)、製造者から商品が届く日
通信販売の方法販売サイト、支払方法、送料と発送時期、返品の条件と返品時の送料の負担、購入者が20歳以上であることを確認する方法、配送業者
販売場受注・梱包・出荷の作業場所、保管場所とおおよその面積、什器備品(パソコン・机・梱包台・保管棚)と数、酒類販売管理者の標識と20歳未満の飲酒防止の表示の掲示場所、建物内で酒類を提供している場所の有無
収支・資金販売開始の予定時期、月間の販売見込みと仕入(製造委託)の見込み、必要資金の額と調達方法
販売管理者選任予定者、研修の受講状況
その他決算の確定時期、定款の書き換えの完了予定、製造委託契約の締結予定日と製造者の代表者名

「通信販売の方法」の問いは、免許の手引のチェックリストの項目に加えて聞いたもので、シートでは印を付けて区別しました。申請書類のうち、サイトのレイアウト図・申込書・納品書(案)と、特定商取引法関係のチェック表(価格・送料、支払、引渡時期、返品、名称・住所・電話番号、代表者又は責任者、その他の負担金)を作るために必要だからです。販売の条件が決まっていないと、申請書類も作れません(特商法表記)。

「販売場」の問いのうち、受注・梱包・出荷の作業場所と保管場所は、上で紹介した販売場の図面の材料になります。標識と表示の掲示場所を聞いたのは、販売場に酒類販売管理者の標識を掲げ、20歳未満の飲酒防止の表示も行うことになるためです。

資金の裏付けと、定款の事業目的

所要資金の裏付けは、自己資金なら資金繰表・資金を捻出する根拠の説明書・残高証明書・預金通帳などの写し(名義と残高が分かるもの)、融資なら金融機関の融資証明書です。残高証明書と融資証明書は原本、通帳は写しを使います。製造者の見積書の備考(ボトル・ラベルなどの資材は発注者の支給、納品の送料は別途)も、収支の見込みの前提として読み取りました。

定款は書き換えの途中だったため、変更後の全ページの写しと完了の予定日、事業目的を変える場合は変更登記の完了の予定日も聞き、事業目的に酒類の販売業が含まれていることを確かめる段取りにしました。

回答シートの「その他」で決算の確定時期を聞いたのは、経営の基礎の要件との関係です。財務諸表で、最終の事業年度の繰越損失が資本等の額を上回っていないか、直近3期のすべてで資本等の額の20%を超える欠損が出ていないかなどが確認されるため、申請の途中で決算期が来れば追加の提出があります。次の決算の確定時期と、要件に当たらない見込みかどうかを、早い段階で確かめておきました。

提出から販売開始まで

申請の流れは「御社/事務所/税務署」の3列の図で示しました。書類・情報の送付、事務所による申請書類一式の作成(登記事項証明書は事務所が取得)、内容の確認と署名押印、郵送での提出、税務署からの求めへの対応(訪問・現地確認・追加書類)、登録免許税の納付(預り金から)、免許通知書の受領、販売開始(販売管理者の選任と届出、標識の表示)という順です。注文の受付を含めて、販売の開始は免許通知書を受け取った後と明記しました。

製造委託で決めた保管と価格の改定

クラフトビールの製造委託では、製造者の醸造所内の施設で製品を保管すること(樽・瓶の両方)、発注者の都合で納品が延びた場合の合理的な期間の保管と、長期の保管になったときの費用の協議、発注者が将来自社の冷蔵倉庫を設けたら納品先を変更できることを定めました。保管場所を共用する場合の停電などによる損害は、発生の原因や設備の管理の状況を踏まえて協議で決める条項と組み合わせています。

製造者が価格の改定を申し入れられる事由には、原材料費・燃料費・光熱費・人件費・物流費の著しい上昇に加えて、酒税その他の租税公課の上昇を挙げました。お酒の原価に占める税の比重を反映した書き方です。瓶詰めを加えた改訂では、製造のロスや充填のロスによって納品の数量に差が出ることを発注者が了承する定めも置いています。損害賠償の上限の例外とした製造者側の原因による人身事故・重大な食品事故・法令違反については、上限を製造物責任保険の付保額とし、故意・重大な過失の場合は上限を設けない、としました(OEM・製造委託)。

よくあるご質問

お酒をネットで売るにはどの免許が必要ですか?

2つ以上の都道府県の消費者に向けてインターネットなどで売るなら、通信販売酒類小売業免許が基本です。免許は販売場ごとに受け、売れるお酒の範囲にも条件があります。

ネットだけで販売する場合も、販売場の図面は必要ですか?

必要です。受注・梱包・出荷の作業場所と保管の場所が分かる配置図などを申請書に付けます。お店の売場のような図面は要りません。

通販の免許で、店頭やイベントでも販売できますか?

できません。通信販売酒類小売業免許では、店頭で注文を受けたり渡したりすることはできないので、店頭で売るなら別の免許を検討します。

OEMで造ったお酒を自社ブランドで通販する場合の注意点は?

製造者の証明書などで通信販売できるお酒であることを確認し、製造委託契約に品目、ネット販売用の発送、免許への協力、表示の責任、製造物責任保険を書いておきます。

販売サイトや納品書に、お酒特有の表示は必要ですか?

販売画面に20歳未満の飲酒禁止の表示と酒類販売管理者の標識の内容、申込画面に年齢の記載欄と20歳未満には販売しない旨、納品書などにも飲酒禁止の表示が必要です。

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