このページの要点
- 「制作の着手」を契約書で定義し、キャンセルの精算の段階と、手付の条項の線をそろえる。
- 段階ごとに、実費と作業の進み具合に応じた精算を書き分ける。平均的な損害を超える部分は無効(消費者契約法9条1項1号)。
- 天然素材の個体差は、制作前に見本・写真・許容の範囲で合意し、「契約の内容」を具体化しておく。
- メッセージの「承ります」で契約が成立し得る。成立の要件、デザイン画の使用範囲、受け取りの遅れの手順も決めておく。
結論:「制作に着手した時点」を先に決め、段階ごとに精算を書き分ける
注文を受けてから作る商品、あるいは注文を受けてから仕入れる商品は、既製品の販売と違い、キャンセルされた時点で、すでに材料の手配やデザインの作業、職人への発注が済んでいることがあります。ところが、その物は、特定のお客様のために作った物で、ほかのお客様には売りにくく、返品されても元の商品に戻せません。一方で、お客様が消費者である場合、キャンセルの際に取れる金額には法律上の上限があります。この両方を満たすための出発点が、「制作の開始」という言葉を契約書で定義し、その前後でキャンセルの精算を書き分けることです。
具体的には、次の5つを決めます。①既製品と受注品をどう区別して表示するか、②制作の開始をどの出来事で線引きするか、③段階ごとのキャンセルの精算、④前払いしてもらった金銭の性質、⑤天然素材の個体差や、デザイン画との違いをどこまで契約内容に含めないか。さらに、完成後の引渡し、受け取りに来ないときの保管、注文のやり取りがメッセージで行われるときの契約の成立、デザイン画の権利を加えると、受注品の販売の規約はほぼ網羅できます。予約販売の遅延の扱いは受取拒否・在庫切れ・予約販売の遅延、個体差を理由とする返品の可否の書き方は返品特約と返金ポリシーで紹介しています。このページでは、注文を受けてから作る・仕入れる商品に固有の部分に絞ります。
受注品の取引の流れと、キャンセルの精算を分ける線
- 1注文の受付申込みを受けた段階。まだ材料も作業も動いていない実費はほぼ生じていない。原則として無償で取消しに応じやすい
- 2内容の確定仕様・デザインをお客様が承認した段階以後の変更は有償・再見積もりとする線にしやすい
- 3材料の手配・仕入れ確定材料の購入や、仕入れ先への発注をした段階返品できない材料費が生じる。実費を精算の対象にできる
- 4制作の着手加工や制作の作業を始めた段階作業の進み具合に応じた対価が生じる。割合で区分する
- 5完成・引渡し準備完成して、お客様の受取りを待つ段階原則としてキャンセルに応じない設計が多いが、上限規制の範囲で組む
段階の名前や数は、商品によって変わります。大切なのは、契約書、サイトの案内、見積書で、同じ線を使うことです。
受注品の契約の性質と、まず表示すべきこと
材料を用意して作り、できた物を渡す契約は、売買の性質と、仕事を完成させる請負の性質の両方を持つと説明されることが多い契約です。どちらの規定が働くかは、契約の中身で変わります。売買であれば、買主の追完請求や代金の減額請求の規定(民法562条、563条)が、請負であれば、注文者が仕事の完成前にいつでも損害を賠償して契約を解除できるという規定(同法641条)や、完成前に解除された場合に、既にした仕事の可分な部分の給付で注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できるという規定(同法634条)が、考え方の土台になります。売買の規定は売買以外の有償契約にも準用されます(同法559条)ので、結果として、どちらの性質で説明しても、契約不適合の考え方は共通して働きます。
契約の性質をどちらかに決め切るより、規約の中で、いつ、何を理由に、いくらを精算するのかを明示するほうが、トラブルの予防になります。ここで、お客様が消費者である場合には、消費者契約法の規制が重なります。契約の解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金の条項は、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効です(消費者契約法9条1項1号)。この「平均的な損害」は、条文上、条項で設定された解除の事由や時期などの区分に応じて考えます。つまり、制作の段階が進むほど、事業者に生じる損害が大きくなることを、段階ごとの精算額で反映させるのが、条文の考え方と合致します。
ネットショップの広告と注文画面の表示も、受注品に合わせます。通信販売の広告には、販売価格、支払の時期と方法、商品の引渡時期、申込みの撤回・解除に関する事項などを表示します(特定商取引法11条)。受注品は、引渡時期が既製品のように「在庫があれば翌日」とはなりませんので、制作期間の見込みを期間や期限として示します。注文を確定させる画面には、分量と、これらの事項を表示し、人を誤認させる表示をしてはなりません(同法12条の6)。受注品であることを、商品ページと最終確認画面の両方で、はっきり示すことが前提です。返品特約を表示していないと、受け取りの日から8日を経過するまで申込みの撤回等ができる(同法15条の3第1項)ため、受注品でも、完成品の返品の可否を表示する必要があります(注文確認メールと契約の成立・最終確認画面)。
既製品と受注品の見分け方(表示の考え方)
- 在庫を持ち、注文の後で梱包して発送する既製品。通常の返品特約と配送のルール
- 注文の後で、サイズ・刻印・色などを指定して作る受注品。指定の内容と制作の開始をはっきり定める
- 注文の後で、仕入れ先に発注して取り寄せる取り寄せ品。仕入れ確定後は個別に取得した物として扱う
- 予約期間中に注文を集め、まとめて製造する予約販売。遅延の扱いは配送のルールで。精算の線は受注品と同じ考え方
制作段階ごとのキャンセルの精算
精算の線の引き方を決めるために、まず次の問いを事業者に確認します。
- お客様の承認を受けたデザインや仕様は、いつ確定するのか。確定後の変更を、無償で受けるのか、有償にするのか
- 材料は、注文を受けてから買うのか、あらかじめ在庫を持つのか。買い直しができる材料か、他の注文に回せる材料か
- 職人や工場に、いつ、どの形で発注するのか。発注後の取消しに、費用がかかるのか
- 制作は、どの作業から「着手」と呼べるのか。写真や進捗の記録は残るのか
- 完成後に、他のお客様へ売り直せる商品か。売り直しに値引きが必要か
- お客様の都合で受け取られなかった場合、保管のための費用がいくらかかるのか
これらの回答を表にして、段階ごとの精算の考え方に落とし込みます。数字は事業の実態に合わせて設定しますので、ここでは考え方だけを示します。
| 段階 | 精算の対象 | 考え方のポイント |
|---|---|---|
| 制作着手の前 | 原則なし。材料の手配や発注済みの費用がある場合は、その実費 | 実費を請求するなら、何に、いつ、いくらかかったかを示せるようにする |
| 材料の手配・仕入れ確定後 | 返品や転用ができない材料費・仕入れ費用 | 仕入れ値そのものではなく、他に回せない部分に限る |
| 制作の着手後 | 進み具合に応じた作業の対価+上記の実費 | 進み具合を所定の割合で区分する。区分の基準は事前に明示する |
| 完成後・引渡し準備 | 代金の全額、又は売り直しの値引き分の損失 | 完成品は他のお客様向けに戻せないことが多い。上限規制の範囲で設計する |
書き方としては、「キャンセル料として代金の○%」のような一律の定めではなく、上の段階と、各段階で請求する内容を並べる方法が、消費者契約法9条1項1号の趣旨にも合います。平均的な損害は、事業者の費用の実態と、同種の取引で通常生じる損害から導かれますので、「いくらなら有効」と一律に決まるものではありません。そのため、請求する金額の根拠を、後から説明できるようにしておくことが重要です。消費者から説明を求められたとき、事業者は算定根拠の概要を説明するよう努めなければなりません(同法9条2項)。
受注品の特則 第◯条(注文の変更・取消し)
- お客様は、当社が仕様を確定する旨を通知する前に限り、無償で注文を取り消すことができます。
- 当社が材料の手配又は仕入れ先への発注を行った後に、お客様のご都合で注文を取り消す場合、お客様は、当社が他に転用できない材料費及び仕入れに要した費用の実費をご負担ください。当社は、お客様のお求めに応じて、その内訳をご説明します。
- 当社が制作に着手した後に、お客様のご都合で注文を取り消す場合、お客様は、前項の実費に加え、制作の進み具合に応じて別表に定める割合の代金をお支払いください。
- 完成後にお客様のご都合で受け取りを取りやめる場合、代金の全額をお支払いください。ただし、当社が当該商品を他のお客様に販売できたときは、その販売により当社が回収した額を差し引きます。
- 本条にいう「制作の着手」とは、当社が材料の加工又は制作の作業を開始した時をいい、当社は、着手した旨をお客様に通知します。
第5項で、着手の時点を通知で確定させる形にしています。着手の判断を事業者だけで行うと争いになりますので、いつ、どの方法で知らせるかも決めておきます。
完成後でも一部を返金する第4項のような定めは、事業者に生ずる損害の実態に近づけるための工夫です。売り直しができるかどうかは商品ごとに違いますので、きっちり線を引けない商品では、売り直しの結果を精算に反映させる設計が、公平さの説明にもなります。
数量や期間を限った販売で、当選や申込みのあとにキャンセルされた場合の精算については、限定販売・抽選販売の数量制限と転売対策の規約の記事で詳しく説明しています。
内金・手付・前払い:金銭の性質を決める
受注品では、注文の時点で代金の一部を前払いしてもらうことが少なくありません。この前払いの性質を、規約で決めておかないと、キャンセルのときにお互いの考えがずれます。主な性質は3つあります。①代金の一部をあらかじめ払ってもらう「内金」、②契約の解除の権利を残す「手付」、③違約のときに没収する約束の「違約手付」です。
民法では、買主が売主に手付を交付したときは、相手方が履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供して、契約を解除できるとされています(民法557条1項)。履行に着手した後は、この方法で解除できません。受注品の販売では、事業者が制作に着手した後は、お客様が手付を放棄しても解除できない、という整理が成り立つ余地があります。ですから、何をもって「着手」とするかの定義を、キャンセルの精算の段階の区分と同じ線にそろえておくと、手付の条項とも矛盾しません。
前払いの金銭を「いかなる場合も返還しない」と書く方法は、お客様が消費者の場合、注意が必要です。実際の損害を超えて返還しない部分は、違約金として平均的な損害を超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項1号)。また、事業者が契約の解除を求められる場面で一方的に返還を免れるように読める書き方は、消費者の利益を一方的に害する条項として無効になる可能性があります(同法10条)。前払いの金銭は、まず代金に充当し、キャンセルの場合は、上の段階ごとの精算額を差し引いて返還する、という流れを明記する形が、整合的です。
書き方の例(一般的な例) |前払いの金銭の扱い
内金の返還
返還しない理由を、損害の実態(実費と作業の対価)に結び付けます。残額が出る場合の返還の期限も書いておくと、お客様の不信感を減らせます。
全額を前払いにする場合の、承諾の通知や商品発送前の通知の扱いは、別のページ(注文と契約の成立)で整理しています。受注品では、前払いを受けたあとの制作の進行を、お客様に知らせる仕組みを併せて用意しておくと、着手の通知とも兼ねられます。
個体差・天然素材・デザイン画との差:「契約の内容」を先に具体化する
引き渡された物が種類や品質に関して契約の内容に適合しないとき、買主は、修補、代替物の引渡しなどの追完を請求でき(民法562条1項)、追完がされないときは代金の減額を請求できます(同法563条)。請負の考え方でも、注文者は同様の請求ができる一方、注文者の供した材料の性質や、注文者の与えた指図によって生じた不適合は、請負人が知りながら告げなかった場合を除いて、請求できません(同法636条)。これを受注品に当てはめると、「契約の内容」にどこまでが含まれているかが、結論を左右します。
天然石、天然皮革、木材など、天然素材を使う受注品では、色、模様、内包物、大きさに、素材ごとの違いがあります。この違いを、不適合として扱わないための基本は、「個体差が出る」と一般論で書くことではなく、注文の時点で、具体的な見本、写真、仕様書、デザイン画に、許容の範囲を添えて合意しておくことです。「契約の内容」が具体的であればあるほど、そこから外れた物は不適合、範囲内の違いは契約内容に適合、という判断が明確になります。
書き方の例(一般的な例) |デザイン画と完成品の違い
仕様の確認
承認という手順を入れることで、仕様が確定し、完成後の「イメージと違う」という争いを、仕様と実物の比較に置き換えられます。
反対に、天然素材であることを理由に、あらゆる違いを免責にする書き方は、使い方を誤ります。事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項は、消費者契約では無効です(消費者契約法8条1項1号)。ただし、引き渡された目的物が契約の内容に適合しないときに、事業者が追完や代金・報酬の減額の責任を負うとしている場合は、不適合による損害賠償責任の免除についての同条1項1号・2号の規定は適用されない扱いになります(同条2項1号)。免責の範囲を、素材の自然な性質から当然に生じる違いに限り、それ以外の不適合では追完と減額に応じる、という二段構えが基本です(免責条項と契約不適合)。
表示の問題もあります。天然か人工か、加熱や染色などの処理をしているか、産地や等級といった事実は、商品の品質や規格その他の内容に関する表示にあたります。実際よりも著しく優良であると示す表示は、不当な表示として禁止されます(景品表示法5条1号)。お客様の希望に応じて素材を選ぶ受注品だからこそ、素材の説明を正確に行い、見積書、注文確認、完成品の保証書で、同じ説明にそろえておきます。
請負的な受注品では、注文者が不適合を知った時から1年以内に通知しないと、原則として権利を行使できなくなります(同法637条1項、売買では566条)。ただし、請負人が不適合を知り、又は重大な過失で知らなかったときは別です(同条2項)。通知の期間を短くする特約を置くときは、消費者契約では、消費者の権利を制限する条項として制限を受けうる点(消費者契約法10条)を踏まえて、短くしすぎないようにします。
よくある疑問と答え|素材の違いをめぐって
Q天然素材の色の違いは、すべて契約の内容に適合していると言えますか?
A承認された見本や写真に、許容の範囲を添えて合意していれば、その範囲内の違いは適合と整理しやすくなります。見本が示されていない場合は、通常想定される範囲で判断されますので、一般論だけの免責は弱くなります。
Qお客様がイメージ画像を送ってくれました。それを仕様とみなせますか?
Aお客様の与えた指図に当たり、その指図どおりに作った結果の不適合は、請負の考え方では請負人の責任が制限されます(民法636条)。ただし、指図が不適当と知りながら告げなかったときは別ですので、懸念があれば制作前に伝えて記録を残します。
完成後:引渡し・所有権・受け取りに来ないときの保管
完成した受注品の引渡しの扱いは、既製品より慎重に書きます。理由は、受け取られないときの損失が大きいからです。
所有権は、特約がなければ、当事者の意思表示だけで移ります(民法176条)。受注品では、「代金の全額の支払が完了した時に所有権が移る」旨を書くのが一般的です。あわせて、引渡し後に当事者双方の責めに帰することができない事由で目的物が滅失・損傷したときは、買主は、追完請求、代金の減額、損害賠償、解除をすることができず、代金の支払も拒めません(同法567条1項)。危険がいつ移るかを、規約で「引渡しが完了した時」と明記します。
お客様が正当な理由なく受け取らない、あるいは長期の不在で渡せない場合は、受領遅滞の問題です。債権者が受領を拒む場合で、債務の目的が特定物の引渡しなら、債務者は履行の提供をした時から引渡しまで、自己の財産に対するのと同一の注意で保存すれば足ります(同法413条1項)。受け取りが遅れたことで履行の費用が増えたときは、その増加額はお客様の負担です(同条2項)。受取拒否の基本的な整理は配送・在庫・予約のルールで紹介しています。受注品では、この仕組みを、保管費用の負担と、一定期間を過ぎた後の解除の手順として、規約に落とし込みます。
受注品の特則 第◯条(受取りの遅れ)
- 当社は、商品の完成後、お客様に完成をお知らせし、引渡しの方法と期日を協議します。
- お客様のご都合により、完成のお知らせから○日を経過しても商品をお受け取りいただけない場合、当社は、相当の期間を定めて受取りを催告します。
- 催告の期間内にお受け取りいただけない場合、当社は、売買契約を解除することができます。この場合のお客様のご負担は、第◯条(注文の変更・取消し)の定めに従い、完成後の取消しに準じて精算します。
- お受け取りまでの保管に要した費用は、お客様の負担とします。当社は、その内訳をご説明します。
保管費用は、実費の範囲にとどめます。実費を超える保管料を一律に決めると、平均的な損害を超える部分の問題が出ます。
長期間受け取られない商品を、事業者が一方的に処分し、所有権を放棄したものとみなす、という書き方があります。消費者契約では、消費者の権利を制限し義務を加重する条項として、消費者契約法10条の問題になり得ます。民法には、受領を拒まれた物が損傷のおそれがあるなどのとき、裁判所の許可を得て競売に付し、代金を供託する方法が用意されています(同法497条)。事業者が自分で処分する条項を置くなら、催告と解除を経た後であること、処分の費用を除いた残りを返還することなど、お客様に不利にならない手順を併せて書きます。
メッセージでの注文・承諾と、デザイン画・制作事例の権利
オーダーメイド品では、注文のやり取りが、サイトのフォームではなく、SNSのメッセージや電子メールで行われることがあります。契約は、契約の内容を示して締結を申し入れる申込みに対し、相手方が承諾したときに成立し、書面などの方式は不要です(民法522条)。意思表示は、相手に到達した時から効力を生じます(同法97条1項)。そのため、メッセージで「お願いします」「承ります」といった言葉が交わされると、制作の着手前であっても、契約が成立したと扱われる可能性があります。契約の成立の時期は、キャンセルの精算の線にも影響しますので、見積書の提示、お客様の承認、入金の確認のうち、どれを成立の要件にするかを決め、メッセージの冒頭や見積書に書いておきます(注文確認メールと契約の成立)。
件名お見積書とご注文の流れについて
本文お見積書をお送りします。内容をご確認のうえ、承認のご連絡と、前払い金のお支払いをいただいた時に、ご注文が成立します。それまでは、無償で取り消すことができます。制作に着手しましたら、着手のご連絡をします。着手後のお取消しは、規約第◯条に従って精算します。
契約の成立と、無償で取消しができる期間、着手の通知を、1通の中で示した例です。
デザイン画やCADデータの権利も、受注品では見落とされがちです。絵画やデザイン画は、美術の著作物として保護され得ます(著作権法10条1項4号)。美術工芸品も美術の著作物に含まれます(同法2条2項)。実用品のデザインが著作物に当たるかは、事案ごとに判断が分かれる難しい論点ですが、少なくとも、作ったデザイン画やデータは、事業者のノウハウとして扱うのが自然で、著作権は創作した時に、何の手続もなく発生します(同法17条2項)。
問題になりやすいのは、次の場面です。お客様が、事業者が作ったデザイン画を、別の製作者に渡して同じ物を作らせる。事業者が、同じデザインで追加の制作を求められる。お客様が、完成品の写真や型を使って、複製品をつくる。複製は著作権者の権利ですので(同法21条)、デザイン画やデータの使用の範囲を、規約で「制作した商品の購入者の個人的な使用のため」と限り、複製・転売・別の製作者への提供は、事前の承諾を必要とする、と書きます。反対に、お客様が持ち込んだデザインや写真を使う場合は、お客様がその権利を有していることの保証と、第三者の権利を侵害したときの責任の分担を書きます。
制作事例を、事業者のSNSやサイトに載せる場合も、お客様の許可が前提です。完成品の写真に、お客様が特定できる情報(名前の刻印、メッセージ、手や顔)が写り込まないよう配慮し、掲載の可否を、注文時に選べるようにします。掲載を断られた案件は、事例として使えないことを、社内の運用でも共有しておきます。
起きがちなことと、公開前の確認
公開前の確認リスト
- 既製品と受注品を、商品ページと最終確認画面の両方で区別して表示した
- 「制作の着手」の定義を決め、キャンセルの精算の段階の区分と、手付・内金の条項の線をそろえた
- 各段階の精算額を、実費と作業の進み具合で説明できるようにした
- 前払いの金銭の性質を決め、返還の手順を書いた
- 天然素材は、見本・写真・許容の範囲を、制作前の承認として取る流れにした
- 契約の成立の要件を、見積書とメッセージの冒頭に示した
- 完成後の受け取りの遅れ、保管の費用、解除の手順を書いた
- デザイン画・データの使用の範囲と、制作事例の掲載の可否を、注文時に選べるようにした
注文を受けてから作る・仕入れる商品の規約は、既製品の規約に一文を足すだけでは足りません。制作の段階、前払いの性質、素材の違い、受け取りの遅れ、デザインの権利という5つの論点が、一つの線でつながっているかを点検します。中古品やブランド品を取り寄せて販売する場合の許可の要否は古物商許可は必要か・申請の手続で紹介しています。
よくあるご質問
注文を受けてから作る商品で、キャンセル料を取ってもよいですか?
取れますが、お客様が消費者のときは、事業者に生ずる平均的な損害を超える部分は無効です(消費者契約法9条1項1号)。制作の段階ごとに、実費と作業の進み具合に応じた精算を書き分け、根拠を説明できるようにします。
「制作を始めたらキャンセル不可」と書けば足りますか?
着手の定義がないと、いつからキャンセルできないのかが争いになります。着手の出来事と、着手を通知する方法を決め、着手後は進み具合に応じた精算とする形が、より整合的です。完成品の返品の可否は、広告と最終確認画面に表示します。
前払いしてもらった内金は、キャンセルのときに返さなくてよいですか?
内金は代金の一部の前払いです。返さない旨を一律に書くと、実際の損害を超える部分が無効になるおそれがあります(消費者契約法9条1項1号、10条)。代金に充当し、キャンセルでは精算額を差し引いて返還する形が一般的です。
天然石や天然皮革の色や模様の違いを、免責にできますか?
全部の免責はできません(消費者契約法8条1項)。制作前に見本や写真で承認を受け、許容の範囲を添えて「契約の内容」を具体化し、範囲内の違いは適合として扱う形にします。それ以外の不適合では、追完や減額に応じる責任を明記します。
SNSのメッセージで注文を受けた場合、契約はいつ成立しますか?
申込みに対する承諾があったときに成立し、方式は問われません(民法522条)。「承ります」などの返信で成立したと扱われ得ますので、見積書の承認と入金の確認などを成立の要件にして、メッセージの冒頭に示します。
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本ページは一般的な情報提供です。許可・届出・免許の運用は、所管の行政機関によって異なることがあります。紹介している書き方の例は、ネットショップの利用規約・特定商取引法に基づく表記・返金ポリシー、酒類の免許、化粧品・中古品・OEM・販路の契約書などについて、一般的な論点を整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 消費者庁 / 国税庁 お酒に関する情報