OEM・製造委託で自社商品をつくる

製造委託契約は、ネットショップでの返品・クレーム・リコールを誰が負担するかを決める上流の契約です。

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自社ブランドの商品がフリマアプリで安く売られている。その原因は、工場の余剰生産品やB品の流出であることが少なくありません。

このページの要点

  • 品質の基準を検査の基準と分け、検査に合格しても不適合の責任は免れないと書く。
  • 不適合の責任の期間を、ネットで売り始めてから見つかる不具合に足りる長さにする(商法526条の特約)。
  • 余剰生産・B品・サンプルの流通の禁止と廃棄の証明、同型品の禁止を書く。
  • 自社ブランドで売るなら、販売者も製造物責任を問われ得る(製造物責任法2条3項)。

製造委託契約は、ネットショップの「上流」の契約

自社ブランドの商品をOEMで作り、ネットショップで売る。この場合、製造委託契約は、ネットショップでの返品・クレーム・リコールを誰が負担するかを決める上流の契約になります。事務所の資料(アパレル雑貨の製造委託、加工食品のOEM供給、プライベートブランドの食品の製造委託、クラフトビールの製造委託、OEM事業者のサイトの規約)で繰り返し出てきた論点は、次の7つでした。

OEMの契約で繰り返し出てきた7つの論点
論点書き方の要点
品質の基準と検査の基準を分ける抜取検査の合否の基準と、不良率の上限・色の差・ロットの差・時間の経過による劣化などの品質保証の基準を別に定め、検査に合格しても不適合の責任は免れないとする
無断の変更の禁止原材料・部材・工程・工場・再委託先・検査の方法・梱包の仕様の変更は、事前の書面の承認制。承認のない変更品は不適合品とみなす
余剰生産・B品・横流し・同型品の禁止発注数量を超える製造の禁止。試作品・サンプル・B品・検査不合格品・余剰品の流通の禁止と廃棄の証明。ブランドの表示を外しても実質的に同じなら同型品として禁止
実績の公開の禁止取引の事実・商品の写真・製造の工程を、製造側がポートフォリオやSNSに載せることは承諾制
表示の責任誰が表示の内容を決めたかで責任を分ける
製造物責任保険とリコール製造側の保険の加入と証明書の提出。リコール・クレームの対応。人身事故・重大な事故は賠償の上限の例外
取引の法規制下請法の改正法(中小受託取引適正化法)などの適用がある場合は、支払期日を受領の日から60日以内で定める

アパレル雑貨の製造委託:原案からの改訂

ブランド側からの依頼で、アパレル雑貨の製造委託契約を見直した事例です。依頼者の原案は製造側の義務を簡潔に並べ、契約不適合の責任の期間は納品日から3か月、損害賠償の上限の例外は知的財産・秘密保持・生命身体・リコールの4つでした。改訂では、ネットで売り始めてから見つかる不具合に対応できるよう、次の点を厚くしました。

事務所の改訂例|品質と不適合の責任

品質の基準

改訂前製造側が品質を守る旨の簡潔な定め。(依頼者原案)
改訂後抜取検査の基準の数値、外観の基準(別紙の仕様書)、許容誤差、梱包の仕様、ブランド・ロゴ・タグの無断使用の禁止、商品コードや品質表示はブランド側の指示に従うこと、別紙の品質基準の保証を定めました。検査に合格しても不適合の責任は免れないこと、基準の見本と合理的に同じでない差は不適合であること、通常の条件で一定期間内に生じた変色・剥離・ほつれ・メッキの剥がれ・錆・異臭などは不適合であることも書きました。

検査の合否と品質の保証を同じものとして書くと、「検査に通ったのだから責任はない」と言われます。

責任の期間

改訂前納品日から3か月。(依頼者原案)
改訂後納品日から1年に延ばし、故意・重大な過失、検査結果の虚偽、無断の変更、法令違反、安全性、権利侵害、リコールに関するものは法令上認められる期間としました。検査の合格や販売の開始は、隠れた不適合についての権利を制限しないこと、この条が商法526条に優先する特約であることも明記しました。

商人どうしの売買では、受取り後の検査と通知の決まり(商法526条)があるので、特約で期間を定める意味が大きくなります。

このほか、納期の起算点(仕様の確定日・発注の確定日・サンプルの承認日のどれか)、所有権は検査に合格した時に移り、納品が完了するまでの危険は製造側が負うこと、輸出入の条件(貿易条件の規則、通関の分担、関税、原産地の証明書)、金型・型紙の帰属と管理と返却、終了後の一定期間の競業の避止、価格と支払の条件(コストが変わったときの価格の協議、サンプル費・開発費、余った資材の扱い)、発注書の記載事項と受諾・拒絶の期限、最低発注数量、製造開始の前後の変更・取消しの費用の負担も加えました。損害賠償の上限の例外は9つの類型に広げ、別紙に品質保証の基準(重大な欠陥は0%など)と検査記録の保存期間を置いています。

ネットに横流し品が出回らないように

自社ブランドの商品が、ネットショップやフリマアプリで、自社と関係のない出品者から安く売られている。OEMでよく起きるトラブルの一つです。原因は、工場の余剰生産品、検査で落ちたB品、試作品やサンプルの流出であることが少なくありません。改訂した契約では、次の3つを独立した条にしました。

製造委託契約 第◯条(無断製造・余剰生産・横流しの禁止)

  1. 乙は、甲の発注数量を超えて本製品を製造してはならない。
  2. 乙は、試作品、サンプル、B品、検査不合格品、余剰品その他本製品と同一又は類似の物品を、第三者に販売し、譲渡し、又は流通させてはならず、甲の指示に従い廃棄して、その証明を甲に提出する。
  3. 乙は、甲のブランドの表示を除去した場合であっても、本製品と実質的に同一の形態の物品を、甲の承諾なく製造し又は第三者に販売してはならない。

実績の公開の禁止(取引の事実や製造の工程の写真を、製造側がSNSやポートフォリオに載せることは承諾制)とあわせて、発売前の情報の漏れも防ぎます。

自社ブランドなら、販売者も製造物責任を問われ得る

製造物責任は、製造した者だけでなく、自ら製造業者として氏名や商標などを表示した者や、製造業者と誤認させるような表示をした者も負います(製造物責任法2条3項)。OEMで作った商品に自社のブランドを付けて売るなら、販売者も責任を問われ得ます。製造側の製造物責任保険の加入と証明書の提出を契約で求めるとともに、自社でも保険の内容を確かめておきます。ネットショップの規約で、生命・身体の損害や製造物責任を賠償の上限の外に出しているのは、このためです(不適合と免責)。

OEM事業者のサイトの規約を読むときの注意

事務所の改訂例|OEM事業者のサイトの規約(受託側)

成果物の権利

改訂前成果物の知的財産権は原則として当社(受託側)に帰属し、別途書面があれば優先する。お客様は著作者人格権を行使しない。第三者の権利の非侵害は保証せず、紛争に一切責任を負わない。規約の変更はサイトに掲載した時点で効力を生じる。(依頼者原案)
改訂後成果物の範囲を、図面・仕様書・試作品・製造データなどに広げて明確にし、権利の譲渡やライセンスは、別途書面の契約を結んだ場合に限りその契約が優先する、としました。規約の変更は、民法の定型約款の変更の要件(利用者の一般の利益に適合するか、契約の目的に反せず合理的であること)に沿い、効力が生じる日の一定期間前までに周知する形に改めました。

受託側の規約です。ブランド側から見ると、デザインやパッケージの権利が受託側に残る構成になっているので、発注の前に個別の契約で確認すべき事項になります。

食品やお酒のOEMでは、表示の責任を「誰が表示の内容を決めたか」で分ける書き方をしています。詳しくは食品のネット販売とお酒のネット販売で紹介しています。

OEMの発注前の確認

  • 品質の基準を、検査の基準とは別に、数値と見本で決めた
  • 不適合の責任の期間を、ネットで売り始めてから見つかる不具合に足りる長さにした
  • 余剰生産・B品・サンプルの流通の禁止と、廃棄の証明を書いた
  • 表示の内容を誰が決め、誰が責任を負うかを書いた
  • 製造物責任保険の加入を確認し、証明書をもらった
  • デザイン・パッケージ・金型の権利の帰属を書いた

受注者の側から修正を求めるときの出し方

プライベートブランドの食品の製造委託で、受注者の側から委託者のひな形に修正を求めた事例では、内容と同じくらい、修正の出し方を工夫しました(食品の表示の責任は食品のネット販売)。

修正依頼の組み立て

  1. 先行の修正は維持する他社が先に入れた修正はすべてそのまま維持し、受注者の追記を色分けで示す
  2. 条番号を動かさない新しい条を作らず、既存の条に項・号を足す。本文の相互参照が自動のフィールドで多数あり、条ずれによる参照の誤りを避けるため。宙に浮いていた価格改定の定めは価格条件の条の項に移し、賠償の上限は損害賠償の条の新しい項にした
  3. 優先度を付ける各項目に〔必達〕〔推奨〕〔任意〕を付け、〔任意〕は相手の判断で見送ってよいとする。記載のない条項(管轄・秘密保持の期間・反社会的勢力など)は相手の案のままでよいと明記
  4. 誤記は別表にする誤記・表記の是正は「交渉事項ではありません」として別表にまとめる
  5. 教えてほしいことを末尾に単価の確定の手順、不良率の社内基準、受入検査の基準、一括決済方式の採否と割引料の負担、フォーキャストの有無、営業日か暦日か、収入印紙の分担

取引の適正化の観点から求めた修正

事務所の改訂例|PB食品の製造委託(受注者側からの修正の要求)

商品マスタの優先

改訂前取引先のシステムに登録した商品マスタ(単価・仕様)が基本契約に優先する。(委託者のひな形)
改訂後価格・品質保証・不適合・回収・賠償と抵触する部分は基本契約が優先する但書を求め、マスタの単価はダウンロードできるようになってから一定の営業日以内に異議がなければ合意として確定する、と合意の時点を明確にしました。

協議に応じない一方的な代金の決定を禁じる、中小受託取引適正化法の規律への対応です。

  • 価格改定:協議で必要な説明と情報の提供を行うこと、主要な原材料の市況が一定以上変動した場合を申入れの事由に例示すること、申入れから一定期間内に協議が整わなければ受注者は以後の個別契約を拒否でき、それを理由に解除・損害賠償をしないこと。後者は、マージンの引下げの要求に応じないことを理由とする一方的な解除を不当とした裁判例を挙げました
  • 値引きによる採用:不合格の理由(客観的な資料)と値引きの額を示し、受注者の同意で成立する手続にすること(減額の禁止への対応)
  • 専用の資材:委託者が指定した包装資材・ラベル・容器・型紙・版と仕掛品は、協議のうえ委託者が相当な範囲で買い取り又は実費を負担する。受注者が過大に調達した分は除く
  • 受注の拒否:生産能力や原材料の調達の状況から納期までの納品が難しい場合を拒否の事由に加え、数量・納期を協議する。一定の期間で承諾とみなす定めそのものは争わない
  • 支払の遅滞:催告のうえ自己の債務の履行を停止できる条項(双方向)と、資金調達のための報酬債権の譲渡を譲渡制限の例外にすること

海外の工場への委託:再委託と貿易条件

ブランド側のアパレル雑貨の製造委託では、再委託先にも無断変更の禁止などと同等の義務を負わせ、再委託先が無断で変更したときは製造者の違反とみなす、と改訂しました。輸出入の条では、危険が貿易条件(インコタームズ)によって発注者に移っても、所有権の移転時期・検査・不適合の責任・品質保証・追完・リコール対応には影響しない、と書いています。海外の工場で作ってネットで売る場合に、引渡しの条件と品質の責任を混同しないための項です。

製造の開始は、発注と仕様の確定、基準見本(ゴールデンサンプル)の承認という前提条件がそろった時点とし、原材料の供給の遅れなど製造者の責めによらない遅れは、通知のうえ協議して納期を延ばすことにしました。製造の開始前の変更・取消しは合理的な範囲の損害を発注者が負担し、開始後は製造者の承諾を要して、原材料費・仕掛品・人件費などを発注者が負担する、と開始の前後で費用の負担を分けています。品質の基準に疑問があれば、生産の前に書面で確認することも定めました。

小さな製造者とのOEMで、終わり方を決める

加工食品のOEMの製造業務委託では、終了と精算の手順を具体的に置きました。契約期間は1年の自動更新で、期中の終了は一定期間前の通知によります。終了の時点で発生している債務は協議して精算し、損害賠償と秘密保持の条は終了後も残ります。解除の後は、相手方の求めに応じて資料・書類・秘密情報を返還又は処分します。秘密保持は終了後も一定期間続き、違反のときの賠償は直接かつ現実の損害の範囲です。不可抗力は発生後一定の日数以内に通知し、履行の一時停止・代替の措置・条項の一部の変更を協議し、一定の期間を超えたら書面で終了できる(既に履行した部分の対価は残る)、としました(外注先との費用の分け方は販路と運営の外注)。

よくあるご質問

OEMで自社商品を作るとき、製造委託契約に必ず入れるべき項目は?

品質の基準(検査の基準とは別に)、無断の変更の禁止、不適合の責任の期間、余剰生産・B品・横流しの禁止、表示の責任、製造物責任保険、デザインや金型の権利、支払の条件です。

検品に合格した商品に後から不良が見つかった場合、製造元に責任を問えますか?

契約で「検査に合格しても不適合の責任は免れない」「隠れた不適合の権利は制限されない」と定めておけば問えます。商人どうしの売買の検査と通知の決まり(商法526条)に優先する特約であることも書いておきます。

工場の余剰品やB品がネットで売られないようにするには?

発注数量を超える製造の禁止、B品・サンプル・余剰品の流通の禁止と廃棄の証明、ブランドの表示を外した同型品の禁止を契約に書きます。

OEM商品の事故で、販売者(ブランド側)も製造物責任を負いますか?

自社の氏名や商標を製造業者として表示した者は、製造物責任を負います(製造物責任法2条3項)。製造側の保険とあわせて、自社の保険の内容も確認します。

パッケージやデザインの権利は、どちらに帰属しますか?

契約で決めなければ、作った側に残ることがあります。受託側の規約が受託側に権利を残す構成になっていることもあるので、発注の前に個別の契約で帰属を決めます。

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