送料・配送・受取拒否・在庫切れ・価格誤表示・予約販売

物を売るネットショップで、サービス型の規約にないのが配送のルールです。実際の運用を一つずつ確かめてから、規約に落とします。

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受取拒否のときに「事務手数料」まで差し引く書き方は、平均的な損害を超える部分として争いになります。

このページの要点

  • 受取拒否で戻ってきた場合の再発送の送料と、解除したときに差し引く額(往復の送料・決済手数料)を規約に書く。
  • 価格の明白な誤表示は、成立前は承諾しない、成立後は錯誤の取消しと期限付きの解除で対応する。
  • 在庫切れは、数量の変更・後日発送・取消しのどれで対応するかを決めて通知する。
  • 予約販売が著しく遅れたときの、お客様の解除の権利を書く。

配送のルールは「実際の運用どおり」に書く

送料、配送業者、発送までの日数、受取拒否、在庫切れ。物を売るネットショップの規約で、サービス型の規約にはない部分が配送のルールです。事務所が作ったネットショップのヒヤリングシートでは、配送まわりを独立した部にして、次の点を一つずつ確認しています。

  • 配送業者の使い分け(基本の業者と、在庫の拠点などの事情で使う他の業者)
  • 決済の方法ごとの、出荷までの日数
  • 送料と送料無料の条件
  • 長期不在・受取拒否・住所の不備で戻ってきたときの実際の対応(再発送の送料、繰り返すお客様への対応、転送されたときの着払いの運賃)
  • お届け希望日の指定を受けるかどうか

回答をもとに、規約には価格の誤表示と在庫の不足、予約商品、配送と引渡し、受領の遅れ、所有権と危険の移転、の各条を置きました。以下、それぞれの書き方を、事務所の書類から紹介します。

受取拒否・長期不在で戻ってきたとき

第◯条(商品の受領遅滞等)

  1. お客様の長期不在、受取りの拒否又は届け先の不備により商品が当社に返送された場合の再発送の送料は、お客様の負担とします。転送により着払いの運賃が生じたときも同様とします。
  2. 当社は、相当の期間を定めて受領を催告してもお客様が商品を受領しないとき、又は受領の意思がないことが明らかなときは、売買契約を解除することができます。
  3. 前項により解除した場合、当社は、受領済みの代金から、往復の送料及び決済に要した手数料に相当する額を差し引いた残額を返還します。

差し引く額を「往復の送料と決済の手数料」という実費に限って列挙したのは、お客様との契約では、解除に伴って事業者が受け取る額のうち平均的な損害を超える部分が無効になるためです(消費者契約法9条1項1号)。「送料・手数料・事務手数料その他の費用」のように根拠の分からない費用まで並べると、その部分が争いになります。

受取拒否は、民法の受領遅滞(民法413条)の場面でもあります。受領を拒まれた後に、どちらの責任でもない事情で商品が滅失・損傷した場合は、お客様の責めに帰すべき事由によるものとみなされ、お客様は交換や代金の減額などを求められず、代金の支払も拒めません(民法413条の2第2項・567条2項)。規約で解除の手順と返金額の計算を決めておくと、戻ってきた商品をいつまで保管するか、いつ返金するかで迷わずに済みます。

価格の誤表示と在庫の不足

価格を一桁間違えて表示していた、在庫の数が合っていなかった。どの店でも起こり得ることですが、規約に「当社はいつでも注文を取り消せる」とだけ書いても、解除の期限、返送料の負担、錯誤との関係が分かりません。事務所の規約では次のように書いています。

第◯条(価格の誤表示及び在庫の不足)

  1. 当社は、商品の価格その他の表示に明白な誤りがあったときは、その表示に基づくお申込みを承諾しないことができます。
  2. 売買契約の成立後に前項の明白な誤りが判明したときは、当社は、錯誤による取消しその他法令上の権利の行使を妨げられないほか、成立の日から○日以内に限り、お客様に通知して売買契約を解除することができます。この場合、当社は受領済みの金銭を返還し、商品の返送に要する費用を負担します。
  3. 在庫が不足する場合、当社はお客様に通知のうえ、①注文数量の変更(減少分の返金)、②入荷後又は他の拠点からの後日の発送(発送時期の目安を通知します)、③お申込みの不承諾又は売買契約の解除(返金)のいずれかにより対応します。

「明白な誤り」に限っているのは、お客様が普通に気づける誤りかどうかが、錯誤による取消し(民法95条)の争いでも分かれ目になるからです。この条は、契約の成立時期を発送時に置く設計と組み合わせて働きます(注文確認メールと契約の成立)。

予約販売で発売が遅れたとき

予約商品の規約で見落とされやすいのが、遅れたときのお客様の権利です。事務所の規約では、予約販売の商品は商品ページの個別の条件によるとしたうえで、発売・入荷の時期が変わったら速やかに通知すること、当初の表示から著しく遅れた場合はお客様が申込みを撤回し又は契約を解除できることを書いています。「入荷が遅れても一切責任を負いません」とだけ書くと、いつまで待たせてもよい書き方になり、お客様の側からの解除の手段がない条項として争われます。

配送と引渡し、危険の移転

配送と引渡しの条で決めたこと(事務所の規約から)
項目定め
配送の範囲日本国内のみ。海外への配送は行わない
配送業者当社が選ぶ。基本の業者を書いたうえで、在庫の拠点によって他の業者を使うことがある旨
日時の指定受けない(追跡番号で配送業者に直接依頼してもらう)
引渡しの完了指定された届け先に配達された時
遅延当社の責めに帰さない遅延は、責任の条と不可抗力の条による
所有権と危険引渡しの完了の時に移る。引渡し後の滅失・損傷は、当社の責めに帰すべき事由による場合を除き、交換などを求められない

引渡し後の滅失や損傷の危険がお客様に移ることは、民法でも定められています(民法567条)。規約にそれを確認的に書いておくと、配達後に玄関先で傷んだなどの申出に、説明の根拠を示せます。なお、ある店では旧表記に「注文日から○日以上先のお届け希望日は指定できない」とありましたが、実際には日時の指定を受けていなかったため、表記と規約の両方を「お届け日時のご指定は承っておりません」に統一し、配送ページの記載も直すよう納品時の案内でお伝えしました(特商法表記)。

国内の倉庫から発送する海外の会社の場合

海外の会社が日本の倉庫から冷凍食品を発送する事例では、販売と配送を日本国内に限り、沖縄県・離島その他サイトで指定する地域は、冷凍品の配送条件から当面の間配送の対象外としました(表記にも同じ記載)。また、国内の提携事業者が輸入の通関と保管を行い国内の倉庫から発送するため、お客様に関税や輸入消費税の追加の負担が生じないことを規約に明記しました。海外からの通販で多い「受取りのときに追加の請求があった」という誤解を防ぐためです。1回の注文の数量の上限と、制限を逃れるための複数回・複数アカウントの注文を承諾しない旨も書いています。

生花や買取品など、輸送に弱いもの

花束のギフトを2つの事業者が共同で販売する契約では、配送の遅れ・誤配送・破損が制作側の出荷の手続の過誤による場合は実損を請求できる、お客様の注文情報の誤入力(数量・メッセージ・住所)による再送は原則として有償でお客様に請求する、ただし誤入力の原因が当事者の説明や表示にあるときはその当事者が負担する、と定めました。再送の費用と時間の負担が大きい商品の特徴を反映したものです(販路と運営の外注)。

逆に、お客様から事業者へ商品を送ってもらう郵送の買取では、輸送中の事故の扱いが問題になります。依頼者の現行の方針は「輸送中の故障・破損・紛失について一切責任を負わない」でしたが、お客様との関係での有効性を検討する必要があるため、「営業所に届くまでの間に運送業者の責めに帰すべき事由で生じた故障・破損・紛失は、当社の故意又は重大な過失による場合を除き責任を負わない」と、範囲を限った書き方にしました(中古品の買取)。

不可抗力の条は「長引いたときの出口」として書く

事務所の規約では、不可抗力の条を、遅れの言い訳に使う条ではなく、長引いたときに返金して終わるための条として設計しています。列挙する事由には、天災・感染症・法令の改廃などに加えて、物を売る店に固有の事情を入れました。

利用規約 第◯条(不可抗力)

  1. 天災地変、感染症、法令の改廃、運送業者の配送の停止若しくは遅延、仕入先からの供給の停止、外部サービスの障害等により商品の引渡しが困難となった場合、当社は、サイトへの掲載等により、その旨と見通しをお知らせするよう努めます。
  2. 前項の事由が相当の期間継続し、売買契約の目的を達することができないときは、当社及びお客様は、売買契約を解除することができます。
  3. 前項により解除した場合、当社は受領済みの代金を返還し、当社及びお客様は相互に損害賠償を請求しないものとします。

プロ向けネイル用品の自社ECでは、運送業者の停止・遅延、仕入先の供給停止、外部サービスの障害を列挙しました。海外の会社の日本向け食品ECでは、これに国内外の輸入通関・検疫の手続の遅延と、国際輸送の途絶を加えています。

配送業者の記載は、追跡の案内と照らし合わせて決める

プロ向けネイル用品の店のヒヤリングでは、配送ポリシーに「基本的に一社」とありながら、追跡の案内には他の二社も出てくる理由を確認しました。回答は、在庫の拠点などの事情で他の業者を使うことがある、というものでした。これを受けて、規約の配送の条は基本の運送業者を明記しつつ他の業者によることがある書き方にし、在庫不足の条の「後日の発送」にも「他の拠点からの発送」を含めました。書類の文言は、お客様が実際に受け取る追跡の案内とも食い違わないようにします。

海外の会社の日本向け食品ECでは、1回の注文あたりの数量の上限を設けるかを、転売の防止と在庫の管理の観点から聞きました。在庫の量と販売の上限を結び付ける考え方は、ギフト商品の共同販売の契約にもあります。制作のキャパシティが変わる見込みのときは制作側が速やかに通知して協議し、販売側は商品の在庫と販売の上限数を制作のキャパシティを踏まえて調整する、と定めました。在庫に限りのある商品では、売れる数の上限そのものを契約で動かせるようにしておく例です(販路と運営の外注)。

受け取った後の保管と、危険の移転

引渡しの完了を「届け先への配達」に置く設計は、店から運送業者に荷物を渡した時点では危険が移らず、配達の時点まで店が負うということです。その裏返しとして、配達の後のことはお客様の管理になります。

冷凍食品を売る海外の会社の日本向けECでは、規約に、到着後は容器包装の保存方法(常温・冷蔵・冷凍)と賞味期限を確認して保管すること、表示された保存方法に反する保管による品質の劣化その他の損害について当社は責任を負わないことを書きました。配達の時に危険が移る条と組み合わせて、受け取った後の保管の状態による劣化と、商品の不適合とを区別するためです(食品のネット販売)。

店を閉じるとき、発送日数がまだ決まらないとき

サービスの提供を終える場合の条も置きました。相当の期間をおいて告知すること、終了の時点で履行が終わっていない売買契約は、当社が履行するか、在庫が不足する場合の取消し・解除の例によって処理すること、の2点です。予約商品や後日発送の注文が残ったまま店を閉じる場面に備えた定めです。

開業前で配送業者や温度帯が決まっていない場合、草案の段階では表記の引渡時期の欄を「配送業者と温度帯が決まり次第、日数を記入」という記入の枠にしておき、決まってから日数を入れました。ヒヤリングでは、配送業者が決まっているか、冷蔵品ならクール便に対応した業者か、配送地域に条件の違う地域があるかを聞いています。在庫の拠点によって別の運送業者を使う店では、保管・発送の代行業者をプライバシーポリシーの委託先の一覧に載せました。

物とポイントが連動する販売の配送

オンラインのくじ形式でトレーディングカードを販売するサービスの規約は、当選した商品について「配送依頼」と「ポイント交換」を選ぶ仕組みでした。ポイント交換を選べばその商品の配送を求める権利を放棄すること、一定期間配送の依頼がなければ保管の終了・ポイントへの変換・権利の失効などの措置があること、配送業者への引渡しで発送の義務を果たすこと、配送中の紛失・破損は運営者が相当と判断する範囲でポイントの補填や同等の品で対応すること、を定めています。このサービスでは、ポイントの有効期限や失効の扱いも、表記の独立した欄に置かれています(特商法表記)。

よくあるご質問

受取拒否や長期不在で商品が戻ってきた場合、送料をお客様に請求できますか?

規約で定めておけば、再発送の送料や、解除した場合の往復の送料・決済手数料を請求し又は差し引けます。差し引く額は実費の項目に限って列挙し、根拠の分からない事務手数料は入れないのが安全です。

価格を間違えて表示していた注文は、キャンセルできますか?

明白な誤りなら、契約の成立前は承諾しないことで、成立後は錯誤による取消しや、規約で定めた解除で対応できます。解除できる期限と、返送料を店が負担することを規約に書いておきます。

在庫切れの商品が注文されたら、どうすればよいですか?

数量の変更、後日の発送、取消し(返金)のいずれで対応するかを規約に書き、お客様に通知します。返金の方法は返金ポリシーと合わせます。

予約販売で発売日が遅れたときの書き方は?

遅れたら速やかに通知すること、当初の表示から著しく遅れた場合はお客様が撤回・解除できることを書きます。お客様の側の解除の手段がない書き方は避けます。

配送中の破損・紛失は、店とお客様のどちらの負担ですか?

引渡し(届け先への配達)の前の事故は、原則として店の負担です。規約で引渡しの完了の時点を定め、引渡し後の滅失・損傷は店の責任でない場合を除き交換などの対象外、と書いておきます。

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