このページの要点
- 売主の自宅などで買取りの申込みを受け、又は契約を結ぶ取引は訪問購入にあたる(特定商取引法58条の4)。
- 書面は、申込み時(58条の7)と契約時(58条の8)に分かれ、現金の即時取引は58条の8第2項の書面で足りる。
- 書面の受領日から8日の間、売主は引渡しを拒める。期間中に第三者へ引き渡すときは通知が要る(58条の11、11の2)。
- 買取員に任せる場合は、買主の名義、許可、現場の手順、研修、違反時の措置を契約で決める。
出張買取は、特定商取引法の「訪問購入」にあたる
結論から言うと、売主の自宅など営業所等以外の場所で、物品の買取りの申込みを受けたり、買取りの契約を結んだりする出張買取は、特定商取引法の「訪問購入」にあたります(同法58条の4)。訪問購入には、勧誘の前の明示、頼まれていない勧誘の禁止、書面の交付、物品の引渡しの拒絶、クーリング・オフ、第三者に引き渡すときの通知といった規制が一式でかかります(同法58条の5から58条の16まで)。古物商許可を取って買取りの帳簿をつけていても、この規制を守ったことにはなりません。許可は古物営業法の話、訪問購入の規制は特定商取引法の話で、出張買取はその両方を同時に満たす必要があります。
このページは、書面の組み立ての例ではなく、規制の中身と現場の動かし方、そして買取りの現場に出る人(買取員)に規制を守らせる契約を扱います。法定書面の構成の例や、領収書兼同意書の使い方は、中古品・古物の販売と、買取の契約書のページで紹介しています。
訪問購入にあたるか、適用が外れるかの分かれ目
- 売主の自宅を訪ね、その場で買取りの契約を結ぶ訪問購入にあたり、規制が一式でかかる
- 売主が店舗に品物を持ち込み、店舗で契約を結ぶ営業所等での取引で、訪問購入にはあたらない
- 売主が事業として(営業のために)売る適用除外(特定商取引法58条の17第1項1号)
- 売主が日本国外にいる適用除外(同項2号)
- 自動車、家具、書籍、有価証券、記録媒体(音・影像・プログラム)政令で定める物品として訪問購入の対象から外れる(特定商取引法施行令34条)
- 家庭用電気機械器具携行が容易なものは対象に残り、携行が容易でない大きな物は除かれる(同条2号)
- 貴金属、時計、宝飾品、ブランド品、衣類対象。出張買取で扱う品物の多くはここに入る
売主がその住居で売買契約の申込みや締結を請求した場合に、58条の6第1項と58条の7から58条の16までを適用しない定めもあります(58条の17第2項1号)。査定のために来てほしいと頼んだ場合がこれにあたるかは、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。現場では、頼まれたかどうかにかかわらず書面の交付と告知を行うのが安全です。
見落とされやすいのは、適用除外の物品の線引きです。たとえば家電は、持ち運びが簡単な小型のものは対象で、冷蔵庫のような大型のものは除かれます。除外物品が混ざった取引では、同じ訪問でも物品ごとに規制のかかり方が分かれます。取引全体を一つの書式で処理しようとすると、対象と対象外が混在して書面の記載が不正確になりやすいので、対象となる物品を明細で区分しておくと整理できます。
勧誘の前にすること:氏名の明示、勧誘の要請、再勧誘の禁止
訪問購入の規制は、契約書を作る前の、玄関に着く前の段階から始まっています。訪問購入をしようとする購入業者は、勧誘に先立って、相手方に対して、購入業者の氏名又は名称、売買契約の締結について勧誘をする目的である旨、勧誘に係る物品の種類を明らかにしなければなりません(同法58条の5)。「何かお売りいただけるものはありませんか」と切り出して、品物の種類を明かさないまま上がり込むのは、この明示に反します。
さらに重要なのが、58条の6です。購入業者は、勧誘の要請をしていない者に対して、営業所等以外の場所で、売買契約の勧誘をしたり、勧誘を受ける意思があるかを確認したりしてはなりません(1項)。つまり、売主の側から「見てほしい」「買い取ってほしい」という要請があった場合に限って、訪問して勧誘ができます。訪問先で初めて「買取りはいかがですか」と聞く、チラシを配って回って反応を見る、といった動き方は、この規制に正面から当たります。勧誘の前に、勧誘を受ける意思があることを確認する必要もあり(2項)、契約を結ばない旨の意思を示した人には、勧誘を続けてはなりません(3項)。
訪問前から契約までの現場の順番(一例)
- 要請の受付売主からの連絡の日時、手段、見てほしい物品の種類を記録する
- 訪問時の明示名称、買取りの勧誘に来た目的、物品の種類を最初に伝える
- 意思の確認勧誘を受ける意思があるかを確認し、確認欄に記録する
- 査定と説明価格の根拠、支払の時期と方法、引渡しの時期、撤回の権利を伝える
- 申込み又は契約売主が納得した場合のみ。断られたら勧誘を続けずに退去する
現場で実際に問題になるのは、要請の範囲です。売主が「貴金属を見てほしい」と要請したのに、現場で衣類や雑貨の買取りを持ちかけると、要請のなかった物品の勧誘にあたるおそれがあります。要請の記録には、物品の種類を書き込んでおき、現場で別の種類の物品に話が及んだときは、そのつど売主の意思を確認し、確認欄に残す運用が有効です。要請の記録は、法律が書式を定めているものではありませんが、売主が「頼んでいない」と主張したときに、頼まれて訪問したことを示す数少ない資料になります。
勧誘のときに言ってはならないことも決まっています。物品の種類や性能・品質、購入価格、支払の時期と方法、引渡しの時期と方法、申込みの撤回や解除に関する事項、売主がこの売買契約を必要とする事情について、不実のことを告げる行為は禁止されています(58条の10第1項)。このうち物品の種類から引渡拒絶に関する事項までの六つの項目では、故意に事実を告げない行為も禁止されます(同条2項)。人を威迫して困惑させることも禁止です(同条3項)。この規制は、契約を結ぶための勧誘だけでなく、物品の引渡しを受けるための場面にも及びます(同条4項・5項)。
訪問の前後に残しておく記録
- 売主から要請を受けた日時と手段、要請の対象となった物品の種類。
- 訪問の際に、名称・目的・物品の種類を明らかにしたこと。
- 勧誘を受ける意思の確認の結果(確認欄への記入又は署名)。
- 契約を結ばない意思を示された場合に、勧誘を終えて退去したこと。
- 査定額の根拠と、売主への説明の内容。
二つの書面:申込みを受けたとき、契約を結んだとき
訪問購入では、書面の交付義務が二段階になっています。購入業者は、営業所等以外の場所で物品につき売買契約の申込みを受けたときは、直ちに、申込みの内容を記載した書面を、申込みをした人に交付しなければなりません(58条の7第1項)。ただし、申込みを受けた際にその売買契約を締結した場合は、この書面は不要です。次に、売買契約を締結したときは、遅滞なく、契約の内容を明らかにする書面を交付します(58条の8第1項)。そして、契約を締結した際に、代金を支払い、かつ物品の引渡しを受けたときは、直ちに、物品の種類、購入価格、契約の解除に関する事項などを記載した書面を交付します(同条2項)。
この三つの規定の使い分けが、出張買取の現場での書式の設計を決めます。
場面ごとの書面の使い分け
現金の即時取引では、代金の全額の支払と全物品の引渡しの両方が終わったときに限って、簡略な書面でよい点が要です。支払か引渡しの一方でも後になる取引は、記載事項が増えます。
書面には形式の決まりがあります。書面の内容を十分に読むべき旨を、赤枠の中に赤字で記載し、8ポイント以上の大きさの文字と数字を使います(施行規則133条2項・3項)。クーリング・オフに関する事項と物品の引渡しの拒絶に関する事項も、赤枠の中に赤字で記載します(規則134条2項)。さらに内容の基準として、引渡しを拒絶した人に購入価格の面で不利益な内容を定めないこと、売主の側から契約を解除できない旨を定めないこと、購入業者の責めによる解除で民法より売主に不利な義務を定めないこと、法令に違反する特約を定めないこと、が求められます(規則133条1項)。
書面の記載事項を埋めただけで終わらず、売主が読める形になっているかを見ます。字の大きさ、赤枠の位置、控えを売主に渡したことの記録まで含めて、書面の交付です。書面の具体的な組み立て方と、契約書との関係は中古品・古物の販売と、買取の契約書で扱っているので、ここでは書面の交付のタイミングに絞りました。
書面に代えて電磁的方法で提供する場合は、売主の承諾を得ることが前提で、事前に方法の種類と内容を示して説明し、売主が電子機器を自分で操作できることなどを確認する手順が定められています(58条の7第2項、施行規則137条)。現場で端末を使って済ませる運用は、承諾の取り方から設計しないと、書面を交付したことになりません。
引渡しの拒絶と、クーリング・オフ期間中の物品の扱い
訪問購入の特徴は、売主が物品を渡さなくてもよい期間があることです。購入業者は、訪問購入の売買契約の相手方から直接物品の引渡しを受けるときは、その物品の引渡しを拒むことができる旨を告げなければなりません(58条の9)。売主は、書面を受領した日から数えて8日が経過するまでの間、引渡しの期日の定めがあるときでも、引渡しを拒むことができます(58条の14第1項、58条の15)。つまり、その場で現物を持ち帰れる状態でも、売主に「8日間は渡さなくてよい」と告げたうえで、売主が納得して渡すときに限って受け取る、という順番になります。
引渡しの拒絶の告知の条文例
- 乙は、甲が本書面を受領した日から起算して8日を経過するまでの間は、甲に対し、物品の引渡しを拒むことができることを告げた。
- 甲は、前項の告知を受けたうえで、自らの意思により物品を乙に引き渡すことを承諾した場合を除き、8日を経過するまで物品を引き渡さないことができる。
- 甲が物品を引き渡さないことを理由として、乙は、購入価格の減額その他甲に不利益となる取扱いをしない。
第3項は、規則133条1項の基準(引渡しを拒絶した人に購入価格の面で不利益な内容を定めないこと)に対応します。拒絶を選ぶと値段が下がる、という運用を書面に残してはいけません。
売主が物品をその場で引き渡した場合、その物品をどう扱うかも決める必要があります。売主が書面を受領した日から8日以内にクーリング・オフ(申込みの撤回又は契約の解除)をすれば、購入業者は物品を返さなければなりません。売主は、解除をもって第三者に対抗できますが、第三者が善意で過失がないときは対抗できません(58条の14第3項)。この仕組みの下で、期間中に物品を第三者に引き渡すときの規律が置かれています。
第三者への引渡しに関する二つの通知
- 売主への通知(58条の11)
- 売主から物品の引渡しを受けた後に、第三者に物品を引き渡したときは、その旨と引渡しに関する事項を、遅滞なく売主に通知する。通知事項は、第三者の氏名・住所・電話番号、引き渡した年月日、物品の種類・名称・特徴などです(施行規則144条)
- 第三者への通知(58条の11の2)
- 期間中に第三者に引き渡すときは、その物品の売買契約が解除された旨又は解除されることがある旨を、書面で第三者に通知する。書面には、訪問購入で受けた物品であること、起算日から8日を経過するまで売主は解除できることなどを記載します(施行規則145条)
この二つの通知は、実務では「期間中は第三者に出さない」運用をとれば、発生しない通知です。期間中に転売先へ出荷したい事情があるなら、通知の様式と発信の手順を先に用意します。どちらを選ぶかは事業の設計ですが、決めないまま現場に任せるのは避けます。
受け取った物品の社内の流れ(一例)
- 受取り受取日、売主、物品の明細、書面の交付日を台帳に記録する
- 保管期間中は他の在庫と分けて保管し、加工・転売・出荷をしない
- 期間の確認書面の交付日を起算日として、8日の経過を台帳で確認する
- 出荷経過後に出荷する。例外的に期間中に出すときは通知を発信する
- 解除の連絡売主から撤回の通知が届いたら、物品を速やかに返還する
起算日は「契約を結んだ日」ではなく「書面を受領した日」です。書面の交付日を記録していないと、期間の経過を確かめられません。
撤回・解除のあとの金銭:契約条項の上限
クーリング・オフがあった場合、購入業者は、損害賠償又は違約金の支払を請求できません(58条の14第4項)。代金がすでに支払われているときは、その返還に要する費用と利息は購入業者の負担です(同条5項)。これに反する特約で売主に不利なものは、無効になります(同条6項)。
クーリング・オフの期間が過ぎたあとの解除でも、請求できる金額に上限があります。購入業者は、契約が解除されたときは、損害賠償の額の予定や違約金の定めがあっても、代金の支払後の解除なら代金に相当する額と利息、支払前の解除なら契約の締結と履行のために通常要する費用の額に、法定利率による遅延損害金を加えた金額を超えて請求できません(58条の16第1項)。売主が物品を引き渡さない場合も、履行が遅れて引き渡された場合は通常の使用料の額、引き渡されない場合は購入価格に相当する額を超えて請求できません(同条2項)。
書き方の例(一般的な例) |売主が引き渡さない場合の違約金の書き方
引渡しをしないときの請求
違約金の割合をそのまま書くと、法律の上限を超えた部分が無効になるだけでなく、条項全体の信頼性が下がります。上限を条文の中に引き込んでおくと、運用でも超えにくくなります。
売主の都合による解除
売主の側からの解除を封じる定めは、書面の内容の基準(規則133条1項)に反します。解除を認める期間を明示します。
なお、ネットショップの通信販売にある返品特約(返品特約と返金ポリシー)は、訪問購入のクーリング・オフとは別の制度です。通販の返品特約は、特約を表示していれば返品を認めない定めができますが、訪問購入のクーリング・オフは、これに反する売主に不利な特約が無効になる、という強行的な仕組みです。
盗品や偽物が混じっていたときに、購入業者の側から契約を解除する条項を置く場合も、請求できる金額は58条の16の枠に収まります。解除の条件(引渡しから一定期間内で、査定に重大な過失がない場合に限る、など)と、解除後に請求できる範囲を、同じ条にまとめて書くと、運用と条文が食い違いにくくなります。
買取員(業務委託)に規制を守らせる契約
出張買取を広げるとき、本部が自ら全国を回るのは現実的でないため、現場を担う買取員と業務委託の契約を結ぶ事業者があります。このとき、まず整理するのが「誰が買主なのか」です。買取員が本部の名義で買取りの契約を結ぶなら、訪問購入の義務を負う購入業者は本部であり、買取員の現場の違反は、本部の違反として評価されます。買取員が自分の名義で品物を買い取って本部に卸す形なら、買取員が購入業者です。契約の形式を業務委託と呼んでも、現場で誰が誰に代金を払い、どの名義で書面を交付するかで、規制の主体が決まります。
買取員との契約で最初に決める事項
- 買主の名義
- 売主との売買契約を、誰の名義で結ぶのか。書面の事業者欄に誰の名称・住所・電話番号を書くのか
- 許可の保有
- 古物の買取りに必要な許可を誰が持ち、買取員がどの立場で買い受けるのか。許可の写しの提出を求め、更新や取消しの連絡を義務づける
- 現場の手順
- 勧誘前の明示、要請の確認、書面の交付、引渡拒絶の告知、期間中の物品の管理を、本部の手順書のとおりに行う
- 研修
- 研修の受講を現場に出る条件にする。研修費用の負担と、受講後の確認の方法を決める
- 記録の提出
- 要請の記録、確認欄、交付した書面の控え、台帳を、期限内に本部に提出する
現場の遵守事項の条文例
- 乙は、甲のために訪問購入の業務を行うにあたり、特定商取引法、古物営業法その他の関係法令及び甲が定める手順書を遵守する。
- 乙は、勧誘の要請をしていない者に対して勧誘をしてはならず、勧誘に先立って、甲の名称、勧誘の目的及び物品の種類を明らかにしなければならない。
- 乙は、契約の申込みを受け、又は契約を締結したときは、直ちに甲の定める書面を売主に交付し、控えを甲に提出する。
- 乙は、売主から直接物品の引渡しを受けるときは、8日を経過するまで引渡しを拒むことができる旨を告げ、その旨を記録する。
- 乙は、前各項の違反又はそのおそれを知ったときは、直ちに甲に報告し、甲の指示に従って是正する。
手順書を契約の一部として添付し、改訂があったときの通知の方法も決めておくと、現場の運用が最新の手順に追いつきます。
違反があったときの定めも考えます。注意したいのは、行政処分や売主との紛争で本部が受けた損害を、どこまで買取員に負担させるかです。違約金を定めるなら、違反の態様ごとに金額を区分し、本部が受けた損害に見合う額にしておきます。賠償額の予定は民法420条で認められていますが、実際の損害と大きくかけ離れた額は、公序良俗(民法90条)に反するとされることがあります。
書き方の例(一般的な例) |買取員との契約の書き方
違約金
違反の態様を問わない一律の違約金は、実際の損害と乖離しやすくなります。区分と根拠を条文に示すと、請求の説得力が高まります。
個人保証
買取員の債務が将来にわたって増減する形の保証は、個人が保証人になる場合、極度額を定めなければ効力が生じません(民法465条の2第2項)。保証契約は書面でしなければ効力を生じません(同法446条2項)。
買取員が買い取った物品を本部に送る場面では、輸送中の事故の負担と、受領の確認、本部が受け取る前の保管の責任を決めておきます。考え方は配送・在庫のルールと同じです。物品の価値が高いほど、補償つきの送付方法を指定し、送付の記録を残す手順を契約に書き込みます。
研修の費用についても決めます。研修を受けることを現場に出る条件にしたうえで、費用を買取員が負担するのか、本部が負担するのか、一定期間内に契約が終わったときに返還を求めるのかを書きます。返還を求める場合は、実際にかかった費用の範囲に限り、金額の根拠を示します。返還の定めが重いと、買取員が契約を続けるしかなくなる設計になり、条項の相当性が争われやすくなります。また、外注の関係に共通する再委託の禁止や、秘密保持、契約終了時の帳票と預かり品の返還は、販路と運営の外注の契約と同じ考え方で整理できます。
よくある疑問と考え方|買取員の現場での独自の行動
Q買取員が現場で売主に値引きを約束し、書面に反映しないまま帰ってしまうおそれがあります。契約でどう備えますか?
A書面の記載と異なる約束をしないこと、約束をした場合は書面に反映してから交付すること、手順書に反する約束によって売主に生じた損害の扱いと、本部が先に対応したときの買取員への求償を分けて書きます。売主との関係では、書面の記載が基準になるため、書面と現場の約束を一致させる手順を重視します。
Q書面を交付し忘れた場合に、買取員に責任を負わせられますか?
A書面の不交付はクーリング・オフ期間が進行しない状態を生み、本部の責任になります。契約では、書面の不交付を重大な違反として是正と報告を義務づけ、同じ違反が繰り返された場合は契約を解除できると書きます。交付の控えを提出させる運用が、不交付の早期発見になります。
違反したときに起きること:指示、業務停止、期間の進行
規制に違反した購入業者に対して、主務大臣は、是正のための措置や売主の利益の保護を図るための措置を取るべきことを指示でき、指示をしたときはその旨を公表しなければなりません(58条の12)。違反の程度が重い場合や指示に従わない場合には、2年以内の期間を限って、訪問購入に関する業務の全部又は一部の停止を命じることができ、これも公表されます(58条の13)。個人の事業者に停止を命じる場合は、同じ期間、停止の範囲の業務を営む法人の役員になることを禁止することもできるとされています。
民事の面では、書面を交付しないと、クーリング・オフの8日間が進み出しません。8日の起算は、書面を受領した日からだからです(58条の14第1項ただし書)。さらに、購入業者が撤回等に関する事項について不実のことを告げたり、威迫して困惑させたりして、売主がその期間内に撤回等をしなかった場合は、改めて所定の事項を記載して交付した書面を受領した日から8日を経過するまで、売主は撤回等ができます。
だからこそ、体制づくりは、書式を整えることだけでは終わりません。要請の記録、交付した書面の控え、台帳、苦情の受付と対応、研修の記録を、一本の流れとして残しておくと、売主から申出があったときに、どこから確認すればよいかが分かります。
出張買取で起きがちなこと
出張買取の運用の確認リスト
- 買取りの要請を受けた日時、手段、物品の種類を記録している。
- 訪問時に、名称・目的・物品の種類を明らかにする台本を用意している。
- 現金の即時取引の書面と、後日払い・後日引渡しの書面を使い分けている。
- 書面に赤枠赤字の注意書きがあり、文字は8ポイント以上である。
- 引渡しの拒絶を告げ、拒絶しても不利益がないことを書面と運用で示している。
- 書面の交付日を台帳に記録し、8日の経過を確認してから出荷している。
- 買取員との契約で、買主の名義、許可、手順、研修、記録、違反時の措置を決めた。
- 個人の保証人に、極度額と書面の要件を満たしている。
よくあるご質問
出張買取は、特定商取引法のどの規制にあたりますか?
売主の自宅など営業所等以外の場所で、物品の買取りの申込みを受けたり契約を結んだりする取引は、訪問購入にあたります(特定商取引法58条の4)。勧誘の前の明示、要請をしていない人への勧誘の禁止、書面の交付、引渡しの拒絶、クーリング・オフ、第三者への引渡しの通知などの規制がかかります。
自動車や書籍を出張で買い取るときも、訪問購入の規制を守りますか?
自動車、家具、書籍、有価証券、音・影像・プログラムを記録した物などは、政令で訪問購入の対象から外されています(特定商取引法施行令34条)。家庭用電気機械器具は、携行が容易なものは対象に残ります。一つの訪問で複数の物品を買い取るときは、物品ごとに対象かどうかを確認します。
現金で即時に取引する場合、書面はどうすればよいですか?
契約を結んだ際に代金の全額を支払い、全ての物品の引渡しを受けたときは、直ちに、物品の種類、購入価格、契約の解除に関する事項などを記載した書面を交付します(58条の8第2項、施行規則141条)。支払や引渡しが後になる取引は、支払の時期と方法、引渡しの時期と方法も記載します。
クーリング・オフの期間中に、買い取った物品を転売してもよいですか?
期間中に第三者へ引き渡すときは、第三者に、売買契約が解除された旨又は解除されることがある旨を書面で通知する必要があり、引き渡した後は売主にも通知します(58条の11、58条の11の2)。通知を避けたいなら、期間が経過するまで出荷しない運用にします。
買取員に任せた現場でも、本部が責任を負いますか?
売主との売買契約を本部の名義で結ぶなら、訪問購入の義務を負う購入業者は本部です。契約で買取員に手順を守らせ、書面の控えや台帳を提出させる仕組みを作り、違反があったときの是正と措置を決めておきます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。許可・届出・免許の運用は、所管の行政機関によって異なることがあります。紹介している書き方の例は、ネットショップの利用規約・特定商取引法に基づく表記・返金ポリシー、酒類の免許、化粧品・中古品・OEM・販路の契約書などについて、一般的な論点を整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 消費者庁 / 国税庁 お酒に関する情報