ネットショップの決済トラブル:チャージバック・不正注文・未払い・決済代行契約

決済のトラブルは、お客様とカード会社、店と決済代行会社、店とお客様という別々の契約が重なる場所で起きます。規約で決められる範囲と、契約書で読む範囲を分けて整理します。

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このページの要点

  • チャージバックは規約では止められず、決済代行会社との契約と、店が示せる記録で決まる。
  • 不正注文は、決済が通った後ではなく、承諾して発送する前の審査と規約の「承諾しない事由」で備える。
  • 後払い・代金引換・コンビニ払い・振込は、手段ごとに未払いのリスクと決めておく事項が違う。
  • 消費者向けの規約では、責任の全部免除、法令上の権利を奪う書き方、年14.6%超の遅延損害金は無効になり得る。

ネットショップの決済トラブルは、「お客様と店」だけの問題ではありません。カード決済なら、お客様とカード会社、店と決済代行会社、店とお客様という別々の契約が重なっています。このうち利用規約で決められるのは、店とお客様の間の部分だけです。規約に「チャージバックは認めない」と書いても、カード会社への異議申立てを止める力はありません。チャージバックの手続の進み方は、決済代行会社との契約(加盟店契約)で決まります。規約の役割は、手続の中で店の言い分を裏付ける材料になることと、お客様との間で支払義務の線を引いておくことです。

この記事では、売上が取り消されるチャージバック、他人名義のカードによる不正注文、後払い・代金引換・コンビニ払いの未払い、決済代行会社との契約の読み方を順に整理し、規約の誤りと直し方、確かめる事項、条文例をまとめます。契約がいつ成立するかという入口の設計はネットショップの契約はいつ成立するかの解説、返金の方法は返品特約と返金ポリシーの解説に譲り、ここでは決済のトラブルに絞ります。

チャージバックとは何か:売上が後から取り消されるとき、店に何が起きるか

チャージバックは、お客様がカード会社に請求の内容へ異議を申し立て、カード会社が決済代行会社を通じて店に確認や資料の提出を求め、結果として売上が取り消されることをいう実務上の言葉です。法律の用語ではなく、手続の流れ、回答期限、提出する資料は、決済代行会社やカード会社の定める加盟店の規約で決まります。期限は決済サービスごとに違うため、具体的な日数は、利用中のサービスの規約で確認する必要があります。

異議の理由は、大きく分けると次のような型があります。①カード名義人が「注文していない」と申し出る不正使用、②「商品が届いていない」「注文した内容と違う」という申出、③同じ代金が二重に請求されたという申出、④定期購入などで「解約したのに請求が続いた」という申出、⑤本人が注文して受け取ったのに、返品や返金の交渉をせずにカード会社へ異議を出す場合です。⑤は、店から見れば納得しにくい場面ですが、お客様の側に「返金を断られた」という事情があることが少なくありません。返金のルールが不明確だと、お客様はカード会社を窓口に選びやすくなります。

規約でできること、できないこと

カード会社への異議申立てを、店とお客様の間の規約で禁じることはできません。「チャージバックを申請しない」と書いても、カード会社はその規約に縛られないからです。規約に書けるのは、不正な申立てを禁止行為に挙げて、アカウントの停止などの措置を定めておくことと、申立てがあった場合に店が必要な資料を決済事業者へ提出できることへの同意です。実務では、「不正なチャージバック申請」や「虚偽の返金請求」を禁止行為の一つに挙げ、違反があれば一時停止や強制解約ができるとする定めが見られます。ただし、これは申立てそのものを止める定めではなく、悪質な利用者を排除するための定めにとどまります。

規約の読み方にも注意が必要です。規約は、お客様がその内容に同意し、契約の内容になっていて初めて店の主張の根拠になります(民法548条の2第1項)。同意の操作を取っていない、規約へのリンクが購入の画面から見えない、といった状態では、返金の条件を書いてあっても、決済事業者への説明に使いにくくなります。同意のチェックの記録、同意した規約の版、決済の日時が一つの注文に結び付いて残っているかを、導入時に確かめます。

チャージバックが起きたときの損失の計算例

売上が取り消されるときの痛みは、「代金が入らない」ことだけではありません。商品の原価、送料、決済の手数料、異議の処理に伴う手数料は、取消しになっても戻らないことが多いためです。次の数字は、説明のために置いた仮の数字で、実際の手数料は決済サービスの契約で異なります。

1件の注文が取り消されたときの収支(仮の数字)
項目正常に売れた場合取り消された場合
販売価格と送料の合計(税込)8,800円の入金入金なし(受領済みの8,800円も戻る)
商品の原価3,200円3,200円(商品が戻らなければ損失)
発送の送料(実費)800円800円(戻らない)
決済手数料(仮に3.6%)316円316円(戻らない契約が多い)
異議の処理手数料(仮に1件3,000円)0円3,000円
1件の結果利益4,484円損失7,316円

この仮の数字では、1件の取消しで7,316円の損失が出ます。同じ利益率の注文で取り戻すには、1件あたり4,484円の利益として、約1.6件、つまり2件分の注文が必要です。

卸や外注の契約では、この損失を誰が負担するかを書いておかないと、後から争いになります。たとえば、売上を基準に報酬を計算する運営の外注契約で、報酬の発生を「決済完了時」としていると、後日のチャージバックや返金があったときの清算が決まりません。実務では、利益の計算から返金額とチャージバック額を控除する定めに加え、契約が終了した後に取消しが生じた場合の控除の方法と、最終精算の時期を決めておく書き方が見られます。詳しくは委託販売・EC運営の外注契約の解説で扱っています。

他人のカードやなりすましの注文は、承諾する前にどう見分けて断るか

不正注文への対策は、決済が通ってから考えるのでは遅く、注文を承諾して発送する前にどこまで確かめられるかで決まります。第三者が他人のカード情報で注文した場合、名義人はその注文をしていませんから、名義人に契約の効力は及ばないと整理されるのが基本です。本人が代理権を与えていないのに他人の名で結んだ契約は、本人が追認しなければ本人に効力が生じません(民法113条1項)。名義人がカード情報を他人に預けていたなど、代理権を与えたと見られる事情がある場合は別の整理になり得ますが(同法109条、110条)、店の側で立証できることは多くありません。結果として、商品は渡り、代金は取り消される、という最も重い損失になります。

入口の対策:カード情報の扱いと本人確認の仕組み

カード決済を扱う加盟店には、割賦販売法にもとづく措置として、カード情報の適切な管理と不正使用対策が求められています。実務上の指針である「クレジットカード・セキュリティガイドライン」(クレジット取引セキュリティ対策協議会が公表し、改訂が続いているため、利用時は最新の版を確認します)では、EC加盟店の対策として、カード情報を自社で保持しない(非保持化)か、保持するならPCI DSSに準拠すること、システムやサイトの脆弱性対策、不正ログイン対策、EMV 3-Dセキュアの導入が挙げられています。EMV 3-Dセキュアは、カード会社がワンタイムパスワードなどで本人確認を行う仕組みで、決済時のなりすましを防ぐ手段です。また、同ガイドラインは、不正利用が顕在化している加盟店に、追加の対策を求める考え方を取っています。水準の具体的な数字は版によって異なり得るため、協議会の公表資料で確かめます。

ここで誤解しやすいのは、3-Dセキュアを入れれば責任の問題がすべて片付く、という考え方です。不正使用があったときの損失を誰が負うかは、加盟店契約の条項で決まります。導入の有無で負担がどう変わるかは、契約書の該当箇所を読んで確かめます。

注文を審査する目安と、断るための規約の書き方

運用の側では、自動の決済承認が通っても、発送を保留して確認する注文を決めておきます。次の表は、確認の対象にする場面の目安です。いずれも、該当しただけで不正と決めつけるものではなく、確認の連絡をするきっかけにとどめます。

発送の前に確認する注文の目安と、確認の方法(一般的な例)

  • 請求先と届け先の氏名や住所が大きく異なるギフトの可能性もあるため、注文者に届け先の確認を連絡する。返信がなければ発送しない
  • 初めての注文で高額、同じ商品を大量に注文数量制限や転売の禁止の定めに照らして確認し、承諾しない事由に当たるかを判断する

確認の連絡で、カード番号などの重要情報を店に送らせてはいけません。

断る根拠は規約に置きます。契約が成立するのは店が承諾したときですから、成立時期を「発送の通知を送った時」に置いておけば、確認の間は承諾していないと整理できます。承諾しない事由には、「決済が完了しないとき」「不正な注文と認められるとき」「転売を目的とした大量の注文と認められるとき」を挙げ、最後の受け皿は、列挙した事由に準ずるものに限ります(設計の詳細は契約の成立時期の解説)。あわせて、利用できる決済手段は「お客様本人の名義で、適法に使用できる権限のあるもの」に限ることを書き、他人名義のカードや不正に取得された情報の使用を禁止行為に挙げます。

確認の連絡には、発送を保留していること、まだ承諾していないこと、期限までに回答がないときは承諾せず返金することを書きます。

なお、不正を検知した情報を決済事業者と共有する場合は、プライバシーポリシーに利用目的として「不正注文の防止、チャージバックへの対応」を具体的に書きます。外部の不正検知サービスを使うときは、その事業者への提供が委託に当たるのか、第三者への提供に当たるのかを整理しておきます(個人情報保護法27条、25条)。

後払い・代金引換・コンビニ払い・振込で代金が入らないとき、誰が何をするか

代金の回収リスクを誰が負うかは、決済手段によって違います。カード決済では不正使用による取消しが主な問題ですが、後払い、代金引換、コンビニ払い、銀行振込では、お客様が払わないこと自体が問題になります。売買契約では、目的物の引渡しの期限と代金の支払の期限は同一と推定されます(民法573条)。ネットショップでは、先払いにするか、受取りと同時にするか、後払いにするかで、店が抱える未回収のリスクが変わります。

決済手段ごとの未払いのリスクと、先に決めておくこと
決済手段主なリスク先に決めておくこと
後払い(決済会社が請求する型)審査に通らない。請求書が届かない。返品後も請求が残る審査に通らなかったときの扱い(他の決済への変更か、承諾しないか)。返品・取消しを決済会社へ知らせる手順と期限
代金引換受取りの拒否。長期不在で荷物が戻る。繰り返しの拒否再発送の送料の負担。拒否を繰り返すお客様の注文を承諾しない事由。解除する場合の返金額の計算(配送と在庫の規約の解説に詳しい)
コンビニ払い支払期限を過ぎる。期限後に支払われる期限と、期限後の入金の扱い。自動取消しの通知。期限後の入金を返金する手続と手数料の負担
銀行振込入金の確認が遅れる。名義が違う。入金額が不足する入金確認の時点(営業日の何時まで)、名義違いの扱い、不足分と過払い分の処理、振込手数料の負担

後払い決済:審査と返品の連絡が肝心

後払い決済は、一般に、決済会社が審査をしたうえで請求を行い、店は決済会社から代金を受け取る形が多く見られます。ただし、代金を店が受け取る時期、未払いが生じたときの負担、審査に通らなかったときの扱いは、決済会社との契約の内容によります。契約書で、未払いのリスクが決済会社に移るのか、店が負担するのかを確かめます。店とお客様の売買契約の代金債権が決済会社に譲渡される仕組みの場合、お客様は譲渡の通知や承諾を受けるまでに店に対して生じた事由(たとえば商品の不良や返品)を、譲受人にも主張できます(民法468条1項)。そのため、返品や取消しがあったのに決済会社への連絡が遅れると、お客様の手元に請求が残り、二重の問題になります。

規約には、審査の結果は決済会社が決めること、審査に通らなかった場合は他の決済手段への変更を案内するか、注文を承諾しないこと、を書いておきます。返金ポリシーには、返品・取消しがあった場合に決済会社へ金額の変更を連絡する手順と、請求書が届いた後に取消しをしたときの案内を加えます。

代金引換:受取拒否は規約で線を引く

代金引換は、商品と引き換えに配送事業者が代金を受け取る仕組みで、カード会社への異議申立ては関係しません。その代わり、受取拒否が最大の問題です。受取拒否で荷物が戻ったときの再発送の送料、転送で追加の運賃が生じたときの扱い、解除する場合に差し引ける費用は、実費に限って書くのが安全です。差し引く額を往復の送料と決済に要した手数料に限る理由は、配送と在庫の規約の解説にあります。拒否が繰り返されるお客様には、今後の注文を承諾しない事由として、受取拒否の履歴を挙げておく方法があります。

代金が入らないときの督促の順番と、遅延損害金

支払期限を過ぎたら、金銭の債務は期限の到来した時から遅滞の責任を負います(民法412条1項)。遅延損害金は、約定の利率がなければ法定利率で計算され(民法419条1項)、法定利率は年3%を出発点に3年ごとに見直される仕組みです(同法404条2項、3項)。具体的な数値は、適用される時点の利率で確認します。約定の利率が法定利率を超える場合は、約定が優先します(民法419条1項ただし書)。

お客様が消費者の場合には上限があります。支払期日までに支払わないときの損害賠償の額の予定や違約金を定める条項は、合算した額が、支払期日の翌日から支払の日までの日数に応じて年14.6%の割合で計算した額を超える部分について無効です(消費者契約法9条1項2号)。この上限には督促の手数料のような違約金も合算されますので、「年14.6%」に加えて「督促手数料」を別に取る書き方は、合算額が上限を超えるおそれがあります。額を実感するために、8,800円の未払いが10日続いた場合を計算すると、8,800円×0.146×10日÷365日で約35円、30日続いて約106円です。遅延損害金そのものは小さく、督促の実益は、利息よりも、時間と手間を減らす手順を整えることにあります。

支払期限後の督促の順番の例(店の側の動き)
時期動き記録に残すこと
期限から約1週間支払の催告(支払期限と、期限までに入金がなければ契約を解除することがある旨)催告の文面と到達の記録
催告で定めた期限の経過後契約の解除の通知、または注文の取消しと商品の引渡しの停止。民法上、相当の期間を定めて催告し履行がないときに解除できる(民法541条)解除の通知の文面と到達の記録
解除の後未払いの回収。請求額が60万円以下の金銭の支払なら少額訴訟(民事訴訟法368条)、金銭の支払の請求について支払督促(同法382条)などの手続がある。いずれも店自身が申し立てる手続請求の根拠となる注文、規約への同意、配送の記録

督促の通知は、店自身の名義で出します。

定期購入で毎回の請求が続くときの解約と最終確認画面の表示については、定期購入(定期便)の最終確認画面の表示と解約条項の記事で詳しく説明しています。

決済代行会社との契約書では、どこを読むか

決済代行会社との契約は、通常は店の側で内容を変えにくい定型の契約ですが、読むべき箇所は決まっています。トラブルが起きたときの費用、売上の止まり方、契約の終わり方です。規約に書く返金や禁止行為の内容は、この契約書の定めと食い違わないようにします。

契約書で確かめる項目(一般的なチェックリスト)

  • 手数料:決済手数料の率、返金のときに手数料が戻るか、異議の処理に追加の手数料がかかるか、振込手数料や月額費用の負担
  • チャージバックの負担:取消しとなった金額を店が負担する条件、取消事由の範囲(決済事業者が定める事由に該当すると判断された場合を含むか)、負担した金額の支払の期限
  • 売上金の留保と相殺:不正取引やチャージバックが生じたときに、売上金の支払を止める、すでに支払った金額の返還を求める、他の売上と相殺する、という定めがあるか
  • 資料の提出と契約書の開示:調査のため取引の資料の提出を求められる場合の期限と方法。カード会社などから契約内容の開示を求められる場合に、お客様の同意を取っておく必要があるか
  • 個人情報とカード情報:カード情報を店が保持しない設計か。決済に関する個人情報を、決済事業者との契約に基づいてどう扱うか
  • 停止と解約:決済事業者が決済機能の提供を停止できる事由と、停止の前の通知。停止した場合に、すでに受け付けた注文や定期課金をどうするか

実務では、プラットフォーム型の運営で、運営者が決済事業者と契約し、出店者のために代金を代理で受け取る設計が見られます。その場合、規約には、出店者が決済事業者の審査を通ることを条件とすること、決済の手数料は出店者の負担とすること、代理受領の権限を運営者と決済事業者に与えること、予約の取消しや解除(決済事業者が定めるチャージバック事由に当たると判断された場合を含む)があれば、運営者が決済事業者に負担した金額を出店者が直ちに支払うこと、が書かれることがあります。さらに、運営者が出店者の売上金を支払うまでの間、不正取引やチャージバックが生じた場合には支払を留保し、支払済みの金額の返還を求め、売上金の支払債務と相殺できるとする定めも見られます。民法上、相殺は、互いに同種の債務を負担する場合に、双方の債務が弁済期にあるときにできます(民法505条1項)。運営者側の事情による相殺を、無制限に認める書き方にはせず、対象とする事由と通知の方法を限ります。

他社の出品を預かって代金を精算する場合の決済の流れについては、他社の出品を受け付けるマーケットプレイスの出品者規約の記事で詳しく説明しています。

よくある失敗と直し方:決済に関する条項の書き方

決済に関する条項には、事業者の側に有利にしたつもりで、かえって効力を争われやすい書き方が目立ちます。ここでは、実務でよく見られる書き方を、誤りやすい点と直し方で並べます。消費者向けの規約では、事業者の責任を全部免除する条項(消費者契約法8条1項1号、3号)や、消費者の利益を一方的に害する条項(同法10条)が無効になり得る点が、共通の判断軸です。

書き方の例(一般的な例) |決済トラブルに関する条項

決済会社とのトラブルの責任

よくある書き方「決済代行会社その他の第三者に起因する決済の遅延、決済不能、チャージバックその他の決済に関するトラブルについて、当社は責任を負いません。」
整えた書き方「決済事業者のシステムの障害により決済が行えなかったことについて、当社に責めに帰すべき事由がないときは、当社は責任を負いません。ただし、当社の対応の遅れによりお客様に生じた損害については、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、当社が負う損害賠償の額は、当該注文の代金額を上限とします。」

責任を「負わない」と全部免除すると、消費者向けでは無効になるおそれがあります(消費者契約法8条)。責任を限るなら、故意又は重大な過失を除くことを、上限を定める同じ一文の中に書きます(同条3項)。

チャージバックがあっても支払義務は消えない

よくある書き方「クレジットカードその他の決済手段に関する紛争、支払不能、チャージバックその他の問題が生じた場合であっても、利用者は当社に対する支払義務を免れません。また、料金について、いかなる理由によっても相殺、減額又は支払拒絶をすることができません。」
整えた書き方「お客様が当社に対して負う代金の支払義務は、決済手段に関する手続(カード会社への申出を含みます。)が行われた場合でも、当社の債務が履行されている限り、影響を受けません。ただし、法令に基づきお客様が有する権利を行使することを妨げるものではありません。」

「いかなる理由でも」という書き方は、法令で認められた権利まで奪うように読めるため、消費者の権利を制限する条項として争われます(消費者契約法10条)。店が債務を履行していることを前提に、支払義務が続く場面に限る書き方に直します。

不正の疑いがあるときの措置

よくある書き方「不正決済が疑われる場合、チャージバックが生じた場合、その他当社が不適切と判断した場合、当社は、事前の通知なく、決済の拒否、ポイントの失効、アカウントの停止その他必要な措置を講じることができます。」
整えた書き方「当社は、次のいずれかに該当するときは、決済の保留、注文の不承諾又は取消し、アカウントの利用制限をすることができます。(1)他人名義の決済手段が使用された疑いがあるとき(2)決済事業者から調査又は利用停止の指示を受けたとき(3)短時間に多数の決済を試みたとき。当社は、措置を講じたときは、速やかにその旨と理由の概要を通知し、疑いが解消したときは速やかに措置を解除します。」

「不適切と判断した場合」に頼ると、判断の基準が読めません。事由を具体的に列挙し、通知と解除の手順を添えると、誤判定のときの説明にも使えます。ポイントを失効させる場合は、取消しの対象を決済が取り消された分に限ります。

卸先のカード決済が不能になったとき

よくある書き方「乙のクレジットカード決済に関し、決済不能、支払拒絶、チャージバックその他これに類する事由が生じた場合には、乙は直ちに代替の方法により支払うものとする。」
整えた書き方「カードの承認が取り消されたとき、又は決済事業者から取消しの通知を受けたときは、甲は乙に通知し、乙は通知から○営業日以内に銀行振込その他甲の指定する方法で代金を支払う。出荷前であれば、甲は出荷を停止することができる。承認の拒否とチャージバックについては、取消しの金額、対象となる注文を通知に明記する。」

事業者間でも、「直ちに」では期限が曖昧で、出荷の前後の扱いが決まりません。通知の方法、支払の期限、出荷停止の可否を分けて書きます。信用状況による前払いへの変更や与信限度の設定と組み合わせる書き方は化粧品の卸の契約書の解説にもあります。

ヒヤリングで確認すること:決済の運用と、その理由

決済の規約や契約書は、運用の実態が分からないと書けません。起案の前に確かめる事項と、その理由を挙げます。回答によって、規約の条項も、決済代行会社との契約で見る箇所も変わります。

確認する事項と、その理由

  • 利用している決済手段(カード、後払い、代金引換、コンビニ払い、振込など)の一覧決済手段ごとに、承諾の前に確かめることと、取消し・返金の手順が違う。規約の決済の条を手段別に分ける必要があるか判断する
  • 決済代行会社の名称と契約の種類、契約書の有無審査、手数料、取消しの負担、売上の留保は契約書で決まる。契約書が手元にないと、規約と食い違うか確かめられない
  • 注文を承諾する前の確認の運用(誰が、何を見て、いつまでに)規約の「承諾しない事由」と、実際の審査の基準を合わせる。審査の基準がなければ、先に基準を作る
  • 代金引換の受取拒否や、振込・コンビニ払いの期限切れの件数と、その対応送料の負担、期限後の入金の返金手続、再発送の可否など、規約に書く項目が決まる
  • 返品・取消しがあったとき、決済会社へどのように連絡しているか連絡の遅れは、請求の残りや二重の問題につながる。返金ポリシーに手順と期限を書く

回答を受けたら、規約の決済の条と、決済代行会社の契約書の該当箇所を、同じ表に並べて食い違いを確かめます。

新しく書き起こした条文例:決済に関する規約の書き方

次の条文例は、消費者向けのネットショップの利用規約を想定して、説明のために書き起こしたものです。実際に使うときは、利用している決済手段、決済代行会社の契約、商品の性質に合わせて調整します。

第◯条(お支払い方法と決済)

  1. お客様は、当社が指定する決済手段のうち、お客様本人の名義で、適法に使用する権限のあるものを使用して、代金をお支払いください。
  2. 当社は、決済処理を決済事業者に委託しています。決済事業者の審査の結果、利用できる決済手段は、お客様ごとに異なることがあります。審査の結果により後払いをご利用いただけない場合、当社は、他の決済手段への変更をご案内し、又はお申込みを承諾しないことがあります。
  3. クレジットカードによる決済は、カード会社の承認が得られたときに限って受け付けます。承認が取り消されたとき又は決済事業者から取消しの通知を受けたときは、当社は、お客様にその旨を通知し、他の方法でのお支払いをお願いし、又はお申込みを承諾しないことがあります。
  4. 前三項は、法令に基づきお客様が有する権利を妨げるものではありません。

第1項で本人名義に限り、第2項で審査の結果を決済事業者のものとし、第3項で承認の取消しの場合の手順を示す。第4項の留保で、消費者の権利を制限する条項にならないようにしている。

第◯条(不正の疑いがある場合の確認と措置)

  1. 当社は、次のいずれかに該当すると合理的に認められるとき、お客様に確認を行うため、発送を保留し、又はお申込みを承諾しないことがあります。(1)他人名義の決済手段が使用された疑いがあるとき(2)短時間に多数の決済を試みたとき(3)決済事業者から調査の依頼又は利用停止の指示を受けたとき(4)注文の内容に虚偽の疑いがあるとき
  2. 当社が前項の確認を求めたにもかかわらず、当社が定める期限(通知の日から○日以内)にお客様からの回答がないときは、当社は、お申込みを承諾せず、決済の手続を取り消します。この場合、お支払い済みの金額は、当社の定める方法で返金します。
  3. 当社は、カード番号、有効期限及びセキュリティコードを、電子メールその他の方法でお尋ねすることはありません。
  4. 当社は、第1項の措置を講じたときは、速やかにその旨を通知し、疑いが解消したときは、速やかに措置を解除します。

事由を列挙し、回答がない場合の扱い(期限後の取消しと返金)を決めている。重要情報を店が求めないことを書いておくと、フィッシングへの注意にもなる。

第◯条(決済に関する手続への協力と情報の提供)

  1. お客様が決済手段の提供者(カード会社などを含みます。)に対して、当社との取引に関する申出を行ったときは、当社は、その申出への対応のために必要な範囲で、取引の記録(注文の内容、お支払いの日時と金額、配送の記録、お客様とのやり取りを含みます。)を、決済事業者その他の関係者に提供することがあります。
  2. 前項の提供に際し、当社は、必要な範囲を超えてお客様の個人情報を提供しません。個人情報の取扱いは、当社のプライバシーポリシーによります。
  3. お客様は、決済手段に関する申出を行う前に、当社に事情をご連絡ください。当社は、ご連絡をいただいたときは、速やかに調査し、回答します。

お客様に先に連絡を促す条を置くと、返金の窓口が分かりやすくなり、カード会社への申出に至る前に解決できる場面が増える。申出そのものを禁止する書き方ではない。

起きがちなこと:決済の準備が後回しになった店で見られる経過

決済のトラブルは、売上が増え、取扱額が大きくなった段階で表に出ることが多く、小規模なうちは見過ごされがちです。次に挙げる経過は、実務でよく見られる型です。

よくあるご質問

チャージバックを防ぐために、規約で「申し立てない」と定めることはできますか?

できません。カード会社への異議申立ては、店とお客様の間の規約に縛られないためです。規約で定められるのは、不正な申立てを禁止行為に挙げて措置を定めること、必要な資料を決済事業者へ提供できることへの同意、そして返金の窓口を分かりやすくしてお客様に先に連絡してもらう工夫です。

他人のカードで注文されて発送してしまった場合、名義人に請求できますか?

名義人がその注文をしていない場合、名義人には契約の効力が及ばないと整理されるのが基本です(民法113条1項の考え方)。名義人がカード情報を預けていたなどの事情があれば別ですが、店が立証できることは多くありません。承諾して発送する前の確認と、規約の承諾しない事由で備えます。

後払い決済で、お客様が支払わないときの損失は店が負いますか?

決済会社との契約の内容によります。未払いのリスクが決済会社に移るのか、店が負担するのかは、契約書で確かめます。また、返品や取消しがあったのに決済会社への連絡が遅れると、お客様に請求が残るため、連絡の手順と期限を返金ポリシーに書いておきます。

消費者への遅延損害金は、年14.6%と書いてよいですか?

年14.6%は消費者契約法9条1項2号の上限です。上限そのものを書くことはできますが、督促手数料など別の違約金を重ねると、合算額が上限を超える部分が無効になります。遅延損害金だけを定める書き方にするのが安全です。

決済代行会社との契約書では、どこを先に読むべきですか?

チャージバックの負担(取消事由と支払の期限)、手数料、売上金の留保と相殺、資料の提出と契約書の開示、取扱商材の制限、停止と解約の事由です。規約に書く返金や禁止行為の内容は、これらの定めと食い違わないようにします。

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本ページは一般的な情報提供です。許可・届出・免許の運用は、所管の行政機関によって異なることがあります。紹介している書き方の例は、ネットショップの利用規約・特定商取引法に基づく表記・返金ポリシー、酒類の免許、化粧品・中古品・OEM・販路の契約書などについて、一般的な論点を整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 消費者庁 / 国税庁 お酒に関する情報

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