中古品・古物の販売と、買取の契約書

中古品を仕入れて売るなら古物商許可が前提です。買い取る側に回るときは、本人確認と、相続品・偽物・ロックへの備えを契約書に書きます。

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出張買取の契約書は、特定商取引法の訪問購入の法定書面とは別物です。不備のまま兼ねると、クーリング・オフの期間が進みません。

このページの要点

  • 古物の売買の営業には公安委員会の許可が必要(古物営業法3条)。無許可の営業は罰則の対象。
  • ネットでは、氏名又は名称・許可した公安委員会・許可証の番号を表示する(同法12条2項)。
  • 買い受けるときは本人確認と記録をする。郵送の確認の方法は施行規則で決まっている。
  • 店舗買取では、処分の権限(相続・共有)・真贋・電子機器のロックを契約書に書く。

中古品を仕入れて売るなら、古物商許可

一度使われた物品、使われていなくても使うために取引された物品、これらに手入れをしたものを「古物」といいます(古物営業法2条1項)。古物を売買・交換する営業をするには、都道府県の公安委員会の許可が必要です(同法2条2項1号・3条)。許可を受けずに営業すると、3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になります(同法31条1号)。いわゆる「せどり」で中古品を仕入れて転売するなら、この許可が前提になります。自分で使っていた物を売るだけの場合や、自分が売った物をその相手から買い戻すだけの場合は、古物営業から除かれています。

ネットで古物を扱う場合は、許可の申請の際にウェブサイトのURLなどを届け出て(同法5条1項6号)、ウェブサイトに氏名又は名称、許可をした公安委員会の名称、許可証の番号を表示します(同法12条2項)。許可を取る前のサイトに「古物商許可番号 未取得(将来的に取得予定)」とだけ書いた欄を置いていた例もありましたが、そもそも扱う物が古物に当たるかを確かめ、許可が必要なら取得してから番号を載せます(特商法表記)。

買い取るときの本人確認と記録

古物を買い受けるときは、相手方の住所・氏名・職業・年齢を確認するなどの措置が必要です(同法15条1項)。郵送やネットで買い取る場合の確認の方法は、施行規則に列挙されています(古物営業法施行規則15条3項)。対価の総額が1万円未満なら確認は不要ですが、ゲームソフトや書籍など一部の品目は金額にかかわらず確認が必要です(同規則16条)。不正品の疑いがあるときは警察官に申告し(同法15条3項)、取引の記録を残します(同法16条)。また、古物商は、営業所か相手方の住所・居所以外の場所で、買い受けのために古物を受け取ってはならないとされています(同法14条1項)。

トレーディングカードの郵送買取

トレーディングカードの郵送・持込の買取の契約書を作成した事例では、ヒヤリングシートを12の部・58の問いに分けて、運用を一つずつ確かめました。主な問いは次のとおりです。

  • 買取の対象(未開封のBOX・カートン・パック、シュリンクの有無)と、買取ができない基準
  • 査定の決め方と、査定に同意しないときの返送と送料
  • 依頼者の都合でキャンセルできる時期
  • 本人確認の書類(郵送の初回の追加書類)と、18歳未満の扱い
  • 輸送中の事故の負担、検品の期間、申告と現物が違うときの措置
  • 長く受け取られないときの処分、振込手数料
  • 不正行為(再シュリンク・カートンの組み直し・中身の違い)と盗品の申告、記録の保存期間

契約書には、郵送の初回は住民票・印鑑証明書などの原本で本人を確認すること、18歳未満は保護者の同意書の提出をもって契約の一部とし、提出がなければ契約は成立しないこと、買取の対象外(盗品・詐欺で得た物・不正転売目的の疑い・海賊版・改造品・模倣品の疑い・破損品)、到着後の検品と査定の通知、査定額への同意で売買が成立し以後は解除できないこと(故意・重大な過失の場合を除く)、同意しないときは着払いで返送、一定期間受け取られないときの処分、不正行為の禁止と警察への相談、取引の記録の保存を書きました。書式は、依頼者がすでに使っていた帳票(買取依頼書兼請求書)の体裁を踏まえ、裏表で完結する一枚ものに組んでいます。輸送中の事故の扱いは配送のルールのページで紹介しています。

ブランド品の買取:契約書と法定書面は別のもの

ブランド品の出張買取の契約書のレビューを依頼された事例では、依頼者の原案のクーリング・オフの条が「契約締結日から起算して8日」、通知の方法が「書面又は下記アドレス宛ての電子メール」、解除の条が「お客様に故意若しくは過失がある場合、又は物品に瑕疵がある場合、弊社は本契約を解除することができる」となっていました。

依頼者からの質問と事務所の回答|出張買取の契約書

Qこの契約書を、そのまま出張買取で使ってよいですか?

A私法上の買取の契約としての有効性と、特定商取引法の訪問購入の法定書面として足りるかは、別の問題です。法定書面の観点では、クーリング・オフの期間の起算点は法定書面を受け取った日で、書面に不備があると期間が進まないこと、電磁的記録による通知を特定のアドレス宛ての電子メールに限るように読める書き方は、書面又は電磁的記録であれば足りるとする法律(特定商取引法58条の14第1項)より狭く不正確であること、解除の事由が広すぎること(何についての過失か、真贋・隠れた破損・機能の不全・法的な瑕疵を区別していない)を指摘しました。「契約書は契約書、法定書面は法定書面」として分けて整えるのが最も安全です。

その後、この依頼者は出張買取をやめて店舗での買取に切り替えたため(前提事実の変更)、店舗買取の契約書を作り直しました。

店舗買取契約書で新しく置いた主な条(改訂後)
条内容
契約の流れ表題を「店舗買取契約書」とし、来店の日時・契約の場所(店舗)・本人確認の方法の欄を置く。査定結果と代金を示し、同意して契約を結んだ時に売買が成立する
売主の表明保証適法な所有権・処分の権限、行為能力、代理人の場合の代理権、相続財産・遺品・共有物の場合の処分権限と相続人・共有者の同意、担保権や差押えがないこと、盗品・遺失物でないこと。違反のときは無催告で解除し、代金の返還と損害の賠償
売主の申告の義務状態・故障・修理歴・改造歴・付属品・保証書・鑑定書、真正性、権利関係、電子機器のロック・パスワード
真贋と不適合専門の鑑定機関などの鑑定で、非真正品・合理的な疑い・申告との違いが分かったら解除と代金の返還。鑑定への協力
電子機器データの削除とバックアップ、アカウントのサインアウトとロックの解除、データについての買主の免責(故意・重大な過失を除く)、未解除の場合の是正と解除
クーリング・オフ店舗で結ぶ売買で訪問購入に当たらないため、法令に別段の定めがある場合を除き適用はない旨
個人情報古物営業法に基づく本人確認、本人確認書類の写しの取得・保存、警察などへの情報提供への事前の同意

相続品や遺品、家族の共有物を売りに来るお客様は少なくありません。処分の権限と相続人・共有者の同意を表明してもらう条は、後から家族に「勝手に売られた」と言われたときの備えになります。スマートフォンやタブレットの買取では、ロックが解除されていないと再販売できないので、解除の責任と、解除されない場合の扱いを決めておきます。

中古ブランド品の「おまかせパック」卸

依頼者からの質問と事務所の回答|おまかせパックの卸契約

Q中古ブランド品を、中身を選べない「おまかせパック」で事業者に卸しています。追加で必要な条項はありますか?

A5つの条項のモデル条文を示しました。①商品の選定の裁量と同意(買い手は内容・種類・数量・状態・ブランドを事前に個別に確認・指定しないことを了承する)、②出荷時の記録と同一性の確認(写真・動画・管理番号と照合できた場合に限り返品に応じる)、③不当な行為の禁止と信用の毀損の防止(すり替え・虚偽の申告・SNSでの誹謗中傷)、④古物営業法などの遵守と、買い手の古物商許可の取得・維持、⑤継続取引の停止の権限です。

逐条のレビューでは、買い手が事業者であることの確認、代金の支払までの所有権の留保、運送中の危険、正規品でないことの返品期限の扱い、買い手が再販売するときに「正規品」と誤認させる表示をしない誓約も指摘しました(不適合と免責)。

くじ形式のトレカ販売と、利用者の出品

オンラインのくじ形式でトレーディングカードを販売するサービスの表記では、審査と本人確認を経た利用者に出品の機能を提供する場合について、出品者が自己の責任で古物営業法の適用の有無を確かめ、必要な許可を取得・維持すること、運営者は本人確認の資料や許可証の提出を求められること、真贋の確認・発送の証明・偽物や空箱の発送への措置を書きました。運営者自身の「古物営業法に基づく表示」の欄は、許可を取得した後に記載する欄として置いています。当選した商品を運営者がポイントと交換して引き取る仕組みを設けるなら、それが古物の買受けに当たるかどうかで許可の要否が変わるため、仕組みを決める段階で確認します。

古物商許可が要るかどうかの分かれ目

  • 中古品を仕入れて、ネットで売る古物の売買の営業として、許可が必要
  • 新品を仕入れて転売する使用のために取引された物(一度消費者の手に渡った物)を仕入れるなら古物に当たり得る。メーカーや問屋から仕入れる新品は通常当たらない
  • 自分が使っていた物を売る古物営業から除かれる
  • 中古品を買い取って、事業者に卸す古物の買受けとして許可が必要。買い受けるときの本人確認と記録の義務がかかる

訪問購入の法定交付書面の組み立て

出張買取では、契約書と訪問購入の法定書面を分けて整えることを上で紹介しました。事務所が作成した法定交付書面は、次の構成です。

訪問購入の法定交付書面の構成(事務所の書式から)

冒頭「【重要】この書面をよくお読みください」と、特定商取引法に基づく法定書面である旨
第1 事業者に関する事項名称・代表者・古物商許可番号・所在地・電話・メール・契約担当者
第2 契約の内容契約年月日、契約の種類(訪問購入による物品売買契約)、対象物品(同時に交付する出張買取契約書の明細のとおり)、購入価格、支払の時期と方法、引渡しの時期と方法
第3 クーリング・オフ本書面を受領した日から起算して8日以内、書面又は電磁的記録で通知でき、発信した時に効力が生じる。損害賠償・違約金を請求しないこと、代金の全額の返還、引渡し済みの物品の返還、通知先
第4 物品の引渡しの拒絶受領日から8日を経過するまでは引渡しを拒絶でき、債務不履行の責任を負わない
第5 その他お客様控えであることの注意書き

依頼者の原案のレビューで指摘した「契約締結日から起算」と「電子的な方法を特定のメールアドレスに限る」書き方を、法定書面の受領日からの起算と、書面又は電磁的記録による通知に改めた形です。

レビューの段階では、買取の契約書の側に足りない条文の一覧も示しました。所有権・権利の保証、真贋の保証、盗品への対応、クーリング・オフ期間中の処分の制限、代金の支払、危険の負担、不適合、損害賠償の制限、解除後の処理、本人確認・古物営業法への対応、個人情報、完全合意です。

現場で代金の受領と確認をまとめて取る「領収書兼同意書」も作りました。所有権と第三者の権利がないことの表明保証、自由な意思による取引で強引な勧誘や不当な圧力を受けていないこと、物品の内容・状態・買取金額の説明を受けたこと、訪問購入に当たる場合はクーリング・オフの説明を受けたこと、本人確認書類の提示と記入、法定交付書面の交付を受けたこと、を確認する書式です。ただし、同意書で確認しただけでは法定書面を交付した事実が補われるわけではない、というレビューの指摘とあわせて使います。

貴金属の訪問購入の契約書面で決めた運用

  • 物品を受け取る場所を、売主の住所又は居所に限る(古物営業法14条1項は、営業所又は相手方の住所・居所以外の場所で、買い受けるために古物を受け取ることを禁じています)
  • 本人確認は金額にかかわらず行い、個人番号は記録しない(支払調書のための個人番号は別の書類で扱う)
  • クーリング・オフの期間中は物品を加工せず、第三者に引き渡す場合は通知する。期間中は事業者の側から解除しない
  • 盗品や非真正品と分かった場合の事業者の解除は、引渡しから一定期間内で、査定に重大な過失がない場合に限り、請求できるのは代金相当額と遅延損害金まで
  • 物品の撮影の条と、確認欄(訪問の要請の有無・告知の有無)

買取の帳票は、欄ごとに要否を決める

トレーディングカードの買取では、依頼者が使っていた買取依頼書の画像をもとに、欄ごとに残すかどうかを聞きました。買取番号の採番、フリガナ・生年月日・年齢・性別、メッセージアプリの名前、職業の選択肢、振込先、商品の明細(種類・シュリンクの有無・数量・査定額)、消費税の内訳、インボイスの登録の有無と番号、同意の文言と署名欄、社内用のチェック欄(検品担当者・身分確認・減額あり・入金済)を本体に置くか別紙にするか、「持込」が店頭か宅配か、です。職業と年齢の欄は、古物営業法15条1項の確認事項に当たります。

契約書では、記載に不備があるときは記録の残る方法で通知し、一定期間内に回答がなければ所有権を放棄したものとみなして処分でき、処分で金銭を得たら処分の費用を差し引いた残りを支払う、と定めました。申込みの記載と現物に数量の不足・状態の不良などの違いがあれば、減額・買取の謝絶・返送のいずれかを選べます(返送の扱いは配送のルール)。振込手数料は買取金額の多寡で負担者を分け、個人情報は本人確認・買取・支払・法令上の記録のためだけに使うこと、取引の記録を一定期間保存することも書きました。郵送の初回の本人確認では、確認できるまで商品の発送を見合わせるよう求めています。

店舗買取の契約書には、代金の条に「売主は、代金の支払を受けた時点で、その支払方法及び支払金額について異議がないことを確認したものとする」を加え、損害賠償の範囲の制限(通常かつ直接の損害)の但書で、売主の表明保証の違反・真贋・盗品の責任は制限の対象外としました(不適合と免責)。

中古ブランド品の卸:所有権と、取引をやめるときの定め

中古ブランド品の事業者向け卸の依頼者原案は、所有権が受領の時に移り、期間の定めのない継続的な契約でした。レビューでは、支払の前に引渡しが終わる可能性があるなら、受領と代金全額の支払が終わった時に所有権が移り、未払いの間は引き渡した後も所有権を留保する条項を提案しました。期間の定めがない点については、一定の予告期間をおいた通知で終了できることと、一定期間注文がなければ解約できることを提案しています。秘密情報にメッセージアプリやメールに保存された内容を含めること、従業員や外部の委託先にも同じ水準の守秘の義務を課すことも提案しました。

よくあるご質問

中古品をネットで仕入れて売るには、古物商許可が必要ですか?

古物を売買する営業として、都道府県の公安委員会の許可が必要です(古物営業法3条)。無許可の営業は罰則の対象です。自分が使っていた物を売るだけなら古物営業から除かれます。

古物商許可を取ったら、ネットショップに何を表示しますか?

氏名又は名称、許可をした公安委員会の名称、許可証の番号を表示します(古物営業法12条2項)。許可の申請の際にウェブサイトのURLも届け出ます。

郵送で買い取るとき、本人確認はどうすればよいですか?

郵送やネットでの確認の方法は施行規則に定められています。対価の総額が1万円未満なら原則不要ですが、ゲームソフトや書籍など、金額にかかわらず確認が必要な品目があります。

出張買取と店舗買取で、契約書やクーリング・オフはどう違いますか?

出張買取は特定商取引法の訪問購入に当たり得て、法定書面の交付とクーリング・オフの規律がかかります。店舗で結ぶ買取は訪問購入に当たりません。出張買取では、契約書と法定書面を分けて整えます。

トレカやブランド品で偽物やすり替えが疑われるときの契約上の手当ては?

売主の表明保証(真正品であること)、鑑定の結果で解除できること、出荷・受取りのときの写真と管理番号による同一性の確認、不正行為の禁止を書いておきます。

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